編集部からのお知らせ
ダウンロード公開中「ITが取り組むべきプライバシー」
最新記事まとめ「医療IT」
内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

デジタルを前提とした企業変革に求められる組織カルチャーの6つの要件 - (page 2)

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2021-01-13 06:00

全ての意思決定はファクトに基づいて行われる

 意思決定の在り方、すなわち誰が、どのような情報をもとに、どのようなプロセスを経て意思決定するかは、組織カルチャーを左右する重要な要素の一つです。日々テクノロジーが進化し、ビジネスの状況が目まぐるしく変わる時代において、組織における意思決定はこれまでにないほどスピードが求められています。このような状況下で、迅速かつ適正な判断を下すためには客観的なデータに基づく議論が重要となります。

 そのようなマネジメントはデータドリブン経営などと呼ばれていますが、これを実現するためには、全てのファクト(データ)が全社員から同一かつ透過に見えなければなりません。業績や成果を示す売り上げやコストなどの過去の定量的データだけでなく、それらの先行指標となるあらゆる業務活動の進行や経過、今後を左右する市場や顧客を含む外部環境に関する情報などがリアルタイムに収集され、可視化されていることが求められます(図2)。

 これは言うほど簡単なことではありませんが、時間をかけてでもこのようなデータ基盤を整備しなければなりません。

図2.ファクトに基づく意思決定 図2.ファクトに基づく意思決定
※クリックすると拡大画像が見られます

 企業では、これまでも販売管理システムや在庫管理システムなど、さまざまな業務システムを構築し、データを管理してきました。しかし、これまでのシステムは、個別の業務を滞りなく遂行するために最適化されており、それぞれ分断された状態で管理されています。営業部門の引き合い情報が、製造担当者からは参照できないため、生産計画と実績がいつも乖離(かいり)するといったことが頻繁に起こります。

 一般的に企業の経営管理では、オペレーションの結果(過去データ)の集計(サマリー情報)がマネージャーなどの上位者に報告され、さらにそれらを集計したサマリー情報が経営者に報告され、最終的に経営会議などで意思決定がなされて、指示が下されるという経路をたどります。その時間間隔についても週次や月次であり、だいぶ前の情報を見ているに過ぎません。

 また、顧客との商談のやりとりや個人の日々の活動など、データ化されていないものも存在します。例えば、「A社は30年来の長い取引先で、納期についても時々無理を聞いてもらっている」という商取引の上で大切な定性情報は、ベテラン社員の頭の中にしか入っていないかもしれません。

 しかし、この情報をデジタル化し、データベースに書き込んでおけば、社内の誰もが検索して参照することができ、正しい意思決定の助けになるはずです。どの階層も現在の状況(最新の詳細データ)や先行指標を参照でき、即時に意思決定がなされて、即座に実行されなければなりません。

 Amazonでは、意思決定に必要なデータがすぐに取り出せるように、社員なら誰でもアクセスできるデータベースが準備されています。同社では、顧客満足度に関する分野だけでもマーケティング、開発、ユーザーサポートなどさまざまな場面で、在庫率、顧客サービスの不満足度、荷物の追跡可能率など500以上に及ぶ指標を活用してデータに基づいた意思決定を行っています。

人材の多様性と組織のトライブ化に対応できている

 今後、少子高齢化によって日本人の就労人口が減少することが懸念されていますが、企業は人材の不足を補うために高齢者、結婚・出産後の女性、外国人などの雇用を促進すると考えられます。

 就労者のダイバーシティー(多様性)が進行するに従って、多様な雇用形態や就労形態に対応した職務環境を提供することが求められるでしょう。パートタイムの就労者や期間雇用の契約社員など雇用形態が多様になるだけでなく、在宅勤務、非常勤、副業・兼業といった自由度の高いワークスタイルもより一般的になっていくでしょう。また、そのような働き方が提供できなければ、優秀な人材を集めることがますます困難になっていくと考えられます。

 特に、デジタルを前提としたビジネスにおいては、事業や業務の全てを従来のように社内の固定的な組織だけで完結して遂行するのではなく、他社との協業や業務提携、企業や業種の枠を超えたエコシステムの構築、アウトソーシング、合弁、吸収合併などによって実現していく割合が増加し、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応するようなダイナミックな組織運営が求められるようになります(図3)。

 このようなビジネス環境の変化に呼応して、組織は「トライブ化」してことが予想されます。「トライブ」(=tribe)とは、もともとは部族を意味し、何らかの共通の興味や目的を持ち、緩やかにつながっている集団を指します(『トライブ~新しい“組織”の未来形』セス・ゴーディン著、講談社)。

 未来のトライブ化した組織では、資金、設備、人材などをメンバーが持ち寄ったり、その都度調達したりします。メンバーの関係も、発注者と受注者という関係ではなく、起案者と協力者であったり、共同出資者や共同事業体であったりするでしょう。企業は、こうした人材の多様性と組織のトライブ化に対応できなくてはなりません。

 今や巨大企業となったAmazonでも、自前主義にこだわる部分と、大胆に外部を活用する脱自前主義のメリハリを巧妙に組み合わせた戦略を展開しています。これは人材の多様化と組織のトライブ化を前提として、他社を巻き込むことのメリットと、他社に依存することのリスク、自前で持つことのメリットとデメリットを天秤にかけ、柔軟に組織を運営しているからにほかなりません。

図3.人材の多様性と組織のトライブ化への対応 図3.人材の多様性と組織のトライブ化への対応
※クリックすると拡大画像が見られます

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]