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内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

デジタルを前提とした企業変革に求められる組織カルチャーの6つの要件 - (page 3)

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2021-01-13 06:00

個人の組織への貢献を可視化し、正当な報奨を与える

 人材が多様化し、組織がトライブ化するに従って、従業員の在籍、所属組織、場所などがより流動的なものとなり、それにより組織に対する帰属意識や、評価と報酬に対する考え方にも変化が生じることでしょう。企業と個人は「雇用主と就労者」という関係ではなく、ビジョンと目的を共有し、約束事に基づいた緩やかな共同体のような関係になっていきます。

 企業は、個人に対して成長や挑戦の場と機会を提供し、個人は顧客や組織内の他者に対して何らかの貢献を返すことで報酬を得ることとなります。言うまでもなく、報酬は就労していた時間に対して支払われるものではなく、貢献の度合いで評価されることとなります。

 Googleでは報酬についても、優秀な人材は会社が思っている以上に優秀で、会社が支払う報酬以上の価値があるという信念を持っています。同社では「報酬は不公平に」という原則に基づき、ほぼ全ての職位で報酬の差が3~5倍になることも珍しくないといいます。

 貢献に報いるためには、個人の貢献の度合いを可視化する必要があります。GoogleやFacebookで採用されているOKR(Objectives and Key Results)はその一つの方法です。OKRでは、定性的な目標(Objectives)と定量的に測定できる主要な成果(Key Result)を設定し、1カ月から四半期程度の短いサイクルでその達成度を評価します。

 従来の目標設定でよく使われるものにKPI(重要業績評価指標)がありますが、目標達成のための中間指標を設けるという点では、OKRとKPIは似ています。OKRとKPIの違いは、KPIはプロジェクトや部署単位で設定し、運用するのに対し、OKRは経営者を含む全社で共有し、コミュニケーションを図ることで、全部署・全社員を会社の目標達成に向かわせる点です。

 会社全体の主な成果は各部門の目標に対応し、部門の成果は個人の目標にひも付くため、個々人の成果と会社の目標のつながりが理解しやすく、全社員が会社の目指す目標へと向かうことを促します。またOKRでは、やや難易度の高い目標を設定します。従って、従来のKPIが人の管理や評価のために活用されるのに対して、OKRはイノベーションのような挑戦的な取り組みに対して、人材を鼓舞し、必要な協力や相互支援を促します。

リスクを許容し、失敗から学習する

 リスクを取って新しいことにチャレンジするためには、失敗に重きを置く文化も重要であり、リスクの捉え方も組織カルチャーの重要な要素です。

 従来の企業では、ほとんどのプロジェクトは成功させなければならないと考え、そのために綿密な計画を立て、実現性や効果について事前に十分に審議します。もちろん、計画時点でリスク要因を考慮しますが、それは失敗するリスクを最小限に抑えるためです。往々にして不確実性が高い領域にはチャレンジせず、リスクが大きそうなプロジェクトは実施しないという判断が下されます。結果として、経験豊富な領域に集中投資する傾向が強まります。

 しかし、不確実性の高いビジネス環境で、新しい取り組みに挑戦するには、行動するリスクと行動しないリスクとを比較し、ポートフォリオで管理しなければなりません。ポートフォリオ管理とは、一つ一つの案件を個別に評価するのではなく、その集合でのバランスを考慮に入れて検討し、合理的な取捨選択や優先順位を導き出して、最適な意思決定を図るマネジメント手法のことです(図4)。

 従って、成功するプロジェクトは全体の2割で、8割は失敗するとこを想定して未知の領域に分散投資することもあります。「Amazonは世界一の失敗をする企業である」と最高経営責任者(CEO)のJeff Bezos氏が述べています。Googleでは、アイデアがうまくいかないと分かったらすぐに中止して撤退するチームは感謝され、また昇格やボーナスを与えられます。その失敗から早く立ち直り、それをもとに学習することを重視しています。

図4.リスクの許容と失敗からの学習 図4.リスクの許容と失敗からの学習
※クリックすると拡大画像が見られます
内山 悟志
アイ・ティ・アール 会長/エグゼクティブ・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任しプリンシパル・アナリストとして活動を続け、2019年2月に会長/エグゼクティブ・アナリストに就任 。ユーザー企業のIT戦略立案・実行およびデジタルイノベーション創出のためのアドバイスやコンサルティングを提供している。講演・執筆多数。

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