デジタルデバイドの治療法
筆者は、治療法があるかのように振る舞いはしない。あるのは、第一歩としての診断方法にすぎない。技術的なものであれ、それ以外であれ、魔法の杖など存在しない。
しかし、テントの外からレンガを投げつけるのではなく、人々を公共のテントへと安全に戻す方法を見つけるため、われわれは限られた物事ではなく、あらゆる物事を試行すべきである。
ハイテクのたとえ話に戻ると、われわれに必要なのはアップグレードだ。コンピューターのハードウェアのように高速でなくても、予測可能でなくともいい。朗報としては、民主的な対応能力を高めたい場合、ハードウェアはさほど重要ではなく、より優れたソフトウェアが必要となる。
すなわち、人々の意思を政府の行動へと変換する際に用いられるプロセスである。高速チップ、ブロードバンド、スマートフォン、ソーシャルメディアなど、インフラストラクチャはすでに存在しており、誰もが日常的に利用している(注意すべき点として、われわれは「デジタルデバイド」を拡大したいのではなく、その橋渡しとなりたいのだ。こうした進化に必要な市民向けのツールが、存在しないなら、そうした状況は解決すべきである。政府は車ではなく道路を建設している。健全な民主主義の下、誰もが参加できる技術的なインフラストラクチャを提供することは、少なくとも車の運転と同様に重要である)。
公的な選択肢による真の利益
『The Economist』の記事では、より具体的に提案した。筆者の言及している原則の最も分かりやすい例として、勧告的決議、すなわち、人々が自らの関心や意見を表明できる、パブリックなオンラインプラットフォームが挙げられる。
ここでの「パブリック」とは、単なる一般公開を意味するのではなく、少なくとも一部は公的資金の拠出があり、非営利の運営によるものである。IDは一意で、荒らしやスパム、ハイジャックもない。こうした環境が作られなかったことを不思議に思うかもしれないが、そこには2つの答えがある。
第一に、範囲や規模が限定されたものであれば、実際に存在する。第二に、設計上採算が取れないため、大企業であれスタートアップ企業であれ、たとえ競合関係がなくても、こうした代物を作る気にはなれない。
こうしたデジタル上の公共広場の使用目的は、リアルタイムの世論調査に限られるものではない。発展が進み、システムへの信頼が高まった後は、地域での投票、さらにその上のレベルへと拡大できるようになる。
このほか、候補者の投票を直接行うのではなく、プラットフォームの要素を是々非々で選択することで、同一の広範なプラットフォームをすべての人に提供するだけの政党ではなく、候補者による承認が可能な混合型の形態が考えられる。
ロシアの政府当局が実際の会議や選挙の開催を拒否したことから、同国の野党は8年前、オンラインの争点投票について、いくつかのシンプルなバージョンを試行した。有権者は、多数決でプラットフォームにアイテムを追加し、党の方向性ではなく、問題の方向性に基づき候補者を選択できた。
こうしたツールのアップグレード版は、英国や米国のような民主主義国家の停滞した政党下で起爆剤として利用される可能性がある。ソーシャルメディアのように、外部から集中砲火を浴びることもなく、システムは慎重な方法で意見を吸収し、代表的な意見を集約できる。
政治家はこれに対応してもよいし、しなくてもよい。こうした手法により、公共セクターは、公益という尺度によって、シリコンバレーのテクノロジー企業に委ねられた権限を一部奪還し、ソーシャルメディアの巨人から親指を奪うことができる。