富士通研究所は1月21日、顔情報と手のひら静脈認証を組み合わせることで、マスク着用でも着用なしと同等レベルの精度で本人特定が可能な技術を開発したと発表した。店舗でマスクをずらすことなく本人認証や決済処理ができるという。
マルチ生体認証技術の概要
同社は、2018年からIDカードなどを使わず非接触で利用可能な複数の生体認証を組み合わせる技術のマルチ生体認証技術の開発を進め、2020年3月からはローソンと共同で新川崎テクノロジースクエア内にある店舗で実証実験を行っている。この取り組みから、マスク着用時は、顔の大部分がマスクで隠れるため認証されないケースが数%程度あったという。また、手のひらを認証センサーにかざす際に距離によって生体情報の読み取りがスムーズではなく時間がかかることがあったという。
今回の技術は、まず顔画像にマスクを合成した顔画像を生成、学習させ、マスクの有無による見え方の差異を吸収することにより、マスク着用なしと同等の99%以上の絞り込み精度が可能になるという。手のひら認証では、認証センサーの通知ランプを搭載し、センサーと手の距離が離れて認証できない場合は赤色、近過ぎる場合は青色、適切な距離の場合は緑色を表示する。利用者が直感的に適切な距離が分かるようにして、スムーズな認証処理ができるようにユーザーインターフェースを工夫したとしている。
マルチ生体認証技術を搭載した入場ゲートのデモ
実証実験店舗での様子
同社では、同日から実証実験中の店舗に今回の技術を用いた入場ゲートを設置して実証を行う。2021年度中の実用化を目指す。
同日記者会見したフェロー デジタル革新コア・ユニット長の増本大器氏は、「生体認証は方法によってメリット、デメリットがあり、マルチ生体認証で差異を補完することで利便性を高められる」「手ぶらで認証できる利便性の高い新しいサービスを形を実現したい」などと語った。
富士通研究所 フェロー デジタル革新コア・ユニット長の増本大器氏