マイクロソフト、千葉県教育委員会と連携--初の共有ポータル

阿久津良和

2021-01-22 16:26

 日本マイクロソフトと千葉県教育委員会は1月22日、ICT利活用の推進に関する協定を締結したことを発表した。県立学校の児童や生徒が学びの質と情報活用能力を向上させ、教員の授業力向上を目的としている。

 同日の記者会見で千葉県教育委員会 教育長の澤川和宏氏は、「国もGIGAスクール構想の実現に向けて各種施策を推進しているが、本件においても校内学習用ネットワークの高速化や大容量通信への対応を進めている。今後は学校においてもAI(人工知能)学習ソフトウェアの普及や授業におけるグループウェアの活用などが急速に進んでいくと思う。Society 5.0時代に生きる子どもたちにとって、PC端末などのICT機器は文房具と同じく日常的に使う不可欠なアイテムとなる」と語った。

日本マイクロソフト 執行役員常務の佐藤亮太氏は、「ニューノーマル(新常態)と呼ばれる時代に人々の暮らし方が変わりつつある状況下で、子どもたちの学び方や教員の教え方、教育そのものも大きな変革が迫られている。直近の対応はもちろん、GIGAスクール構想実現後も見据えて、千葉県の教育改革を支援したい」とコメントした。

千葉県教育委員会 教育長の澤川和宏氏(右)。日本マイクロソフト 執行役員常務の佐藤亮太氏はオンラインで参加した
千葉県教育委員会 教育長の澤川和宏氏(右)。日本マイクロソフト 執行役員常務の佐藤亮太氏はオンラインで参加した

 千葉県教育委員会は、2020年4月3日に、2015年策定の「新みんなで取り組む『教育立県ちば』プラン」を引き継ぐ第3期計画として、「次世代へ光り輝く『教育立県ちば』プラン」を策定した。同県の教育に関する振興施策の基本計画立案などを目的としているが、取り組みの1つである「教職員の資質向上と働き方改革」を実現するため、今回の協定締結に至った。

具体的な取り組みは(1) コロナ禍の対応における分散登校や短縮授業を見据えた協力、(2) ICT活用指導力向上のための教員コミュニティー育成に関する協力、(3) 教員が指導案や教材を相互活用できる『共有ポータル』に関する協力、(4)教員向けにOffice 365を中心とした利活用研修の提供――の4つになる。

連携協定における取り組みの概要
連携協定における取り組みの概要

 1つ目は、コロナ禍における分散登校・短縮授業実施を想定し、県立学校の全ての教員と生徒などが課題の作成や配信、提出に加えて、チャット機能を使ったコミュニケーションを実施可能にするMicrosoft Teamsの利用環境を2021年4月までに構築する。2つ目は、Microsoft Teams上に教科ごとのチームを設置し、教員同士のコミュニティー育成、チャットやファイル共有機能を用いた意見交換の場も設ける。千葉県教育委員会の担当者は「われわれも促すものの、やる気を持った教員が参加することを期待している」「学校の枠を超えるような効果も期待したい」と意見を寄せていた。

 3つ目にある「共有ポータル」は、Microsoft SharePointとMicrosoft Power Platformを用い、教員同士が指導案やオリジナル教材を共有し、相互活用を目的としている。具体的には、教員が作成した教材をSharePointに格納し、属性を付与することで、教材が積み重なっても検索機能で利便性向上を図る。

これまで日本マイクロソフトは東京都、神奈川県、愛知県の教育機関と協定を締結してきたが、共有ポータルの構築は千葉県が初になる。マイクロソフトの佐藤氏は、「千葉県との取り組みを先進先行事例として、弊社も知見を積み重ねながら他自治体への展開も考えている。教員同士のアイデアやデータを共有し、利活用できるプラットフォームを目指したい」と説明した。

 4つ目は、Microsoft Teamsを筆頭としたOffice 365の教育向けコンテンツや、「Microsoft教育センター」で公開中のSTEM教育に役立つカリキュラムと教材をまとめた「ハッキングSTEM」の提供を予定している。

 千葉県教育委員会は、今回の協定を通じて、アクティブラーニング(学習者主体の学習手法)を支えるICT利活用の促進や、教員研修体制の確立による授業力の強化、臨時休校でも子どもたちの学習を支援する環境の構築、教職員の働き方改革といった効果を期待している。

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