今やスキルを持つ人材の不足はこれまでにない水準になっており、IT担当役員の67%が適切な人材を確保することに苦心している。この状況は、特にビッグデータやサイバーセキュリティ、人工知能(AI)などの重要な分野で顕著に現れているという。
新たに人材を見つけることが難しく、IT予算も限られているのであれば、IT人材不足を補うために最高情報責任者(CIO)が取れるもっとも賢明な手段は、人材開発やメンターシッププログラムに力を注ぐことだろう。この記事では、3人のITリーダーに、社内の人材を育てるためのベストプラクティスについて話を聞いた。
1.優れた人材の能力をさらに伸ばす
英国の慈善団体Anthony Nolanの最高デジタル・情報責任者Danny Attias氏は、メンターシップと人材開発は同団体にとって非常に重要だと話す。Anthony Nolanでは、優れた人材が能力を伸ばせるように実習制度を設けている。
「成長意欲を持っている野心的な人材から始めれば、メンタリングはずっと楽になる。そうした人材は成功したがっているからだ」と同氏は言う。「私たちはそれを基本線としてスタートし、それらの人材が必要とするツールやトレーニングを提供した上で、可能な限りチャンスを与えている」
Attias氏は、Anthony Nolanのメンターシップや人材開発プログラムの狙いは、優れた人材がさらに能力を伸ばす手助けをすることだと述べている。同氏は、8年前に初歩のITの仕事からスタートして、最近になって製品ディレクターにまで昇進した人材を例に挙げた。
「その過程では、いくつかの大きな節目があった」と同氏は言う。「私は、彼女が学べるように、ある外部のデジタル体験デザイン会社からメンターシップを受けられる環境を作った。彼女が組織の外部から学べるようにする代わりに、彼女から私にデジタル化について教えてもらうという約束だった」
Attias氏は、Anthony Nolanでは常に組織内の人材に刺激を与える新しい方法を模索していると語った。例えば、同団体の3人の開発者は、最近18カ月のソフトウェアエンジニアリング実習を終え、今では同団体の重要なITプロジェクトやデータプロジェクトを運営しているという。
定常的なIT業務にも教育が組み込まれている。Anthony Nolanでは、2週間のスプリントを行うごとに半日間の個人の能力開発の機会を作っているが、Attias氏は、これが積み重なると年間ではかなりの時間になると述べている。
ITチームはこの個人の能力開発プロセスを自分たちで管理しており、誰が何を学び、どのように知識を伝達し、どの知識を交換し、この学習プロセスをどのように継続的な個人の成長につなげるかを自分たちで決めている。