量子サイズの微粒子特有の不思議な挙動に関する研究が進む中、その成果に基づくテクノロジーを活用し、飛躍的な生産性の向上を目指す企業が増えてきている。BMWもそのメリットに魅せられ、同分野の研究を開始している。
Honeywellは最近、イオントラップ型の量子コンピューターをクラウド経由で顧客に提供するようになった。
提供:Honeywell
ドイツに拠点を置く大手自動車メーカーのBMWは、自動車製造に関係する同社のサプライチェーンを最適化するという目的の下、量子コンピューティングツールの実験を行っており、このほど初期トライアルで得られた明るい成果を披露した。
量子テクノロジーに関するこの実験は、BMWと米国の多国籍企業Honeywellの新たなコラボレーションの一環として実施された。量子コンピューターの開発にまい進するHoneywellは、イオントラップ型の量子コンピューター「System Model H1」をクラウド経由で顧客に提供するという段階に先ごろ突入している。
またBMWは、シンガポールに拠点を置く新興企業Entropica Labsとも連携している。Entropica LabsはHoneywellなどが提供する量子コンピューター上で実行可能なソフトウェアを設計する企業だ。
BMW GroupのIT部門を率いているJulius Marcea氏は、「BMW Groupは、事業運営を強化していくために、常に新たなテクノロジーを追求している」と述べた上で、「量子コンピューティングによる自動車業界の大規模変革に向けた可能性の追求に情熱を燃やすとともに、エンジニアリング上の限界を押し上げるべく力を注いでいる」と述べた。
この実験の背景には、BMWにおけるサプライチェーンの効率を飛躍的に高めるというテーマがある。このサプライチェーンは、部品や製品、サービスを、卸売業者や流通業者、小売業者を経て、最終顧客の手に渡すという流れを円滑化するための複雑なロジスティクスで満ちあふれている。
多くの不具合や混乱をできる限り避けるには、常に適切な製品を適切なタイミングで適切な場所に送り届けられるよう保証する必要がある。これは、条件や要素が絶え間なく変化する大量のデータを扱わなければならないタスクだ。