Gartnerは、日本企業のデジタル化の取り組みは加速しているものの、世界のトレンドラインより約2年の後れを取っているとの調査結果を発表した。
この調査は、同社が世界のCIO(最高情報責任者)を対象に実施した2021年の「CIOアジェンダ・サーベイ」で、2020年7月14日~8月14日にオンラインで行われた。世界74カ国の主要業種に属する1877人のCIOから回答が寄せられ、うち日本の回答は147人だった。

2021年のCIOアジェンダ:デジタル化への旅のプロット図 出典:Gartner(2021年2月)
これによると、「デジタル由来の売り上げ」と「デジタル化されたプロセス」の両方の割合を比較したところ、日本企業は現時点で、全業界において、世界のトレンドラインより約2年の後れを取っていることが明らかになった。
また、デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションが「成熟」段階にある割合は、2018年の33%から2020年は48%に増加した。日本企業の割合も2018年の23%から2020年は37%に上昇している。
2018年時点で日本企業は、デジタル化の成熟という面で世界に約10ポイント後れを取っており、2020年も10ポイント程度の後れを取っているという結果になった。だが同社は、一方で日本企業が世界の企業のペースに追随している表れとも指摘する。
その理由は、日本企業が調査時までに受けた新型コロナウイルス感染症のパンデミックの衝撃が比較的小さかったことと、デジタル化への着実な投資によって成熟度を改善できたことが挙げられるという。
しかし「デジタルイニシアティブなし」と回答した割合が世界平均の14%に対し、日本は19%と高く、この点が懸念材料だという。しかし、2021年には日本政府によるデジタル庁構想の進展や行政のデジタル化の取り組みが見込まれ、日本企業のデジタル化の加速につながる要因となるだろうとする。
また、世界と日本の企業におけるテクノロジー投資の優先順位に明らかな違いが生じていることも分かった。
世界のCIOは、サイバーセキュリティ/情報セキュリティ(61%)、ビジネスインテリジェンス/データアナリティクス(58%)、クラウドサービス/ソリューション(53%)の順で投資を増やすと回答している。一方、日本のCIOは、クラウドサービス/ソリューション(60%)への投資を増やすとの回答が一番多く、続いて基幹システムの改良/刷新(59%)、サイバーセキュリティ/情報セキュリティ(57%)を挙げている。
同社は、テクノロジー投資動向における日本と世界の明らかな違いは、日本は「基幹システムの改良/刷新」への投資を重視していることだと、日本のCIOの59%が投資を増やすと回答しているのに対し、世界での割合はわずか36%。10%は削減すると回答している。
また、ビジネスインテリジェンス/データアナリティクス」への投資でも違いが見られ、世界CIOの58%がの投資を増やすのに対し、日本は48%で、投資増加領域として第5位にとどまっているという。
これらの結果を踏まえ同社は、日本企業のCIOに対し、以下の3つのアクションを実行すべきだとしている。
- 自社の製品/サービスへのフィードバックを継続的に求めることで、より積極的かつ直接的に社外の顧客に関与する
- オペレーションの効率化、新たな収入源の創出、カスタマーエクスペリエンスの向上を目的としたテクノロジーソリューションを提案することで、弾力性(レジリエンス)と比較的反脆弱性(アンチフラジリティー)がある状態の達成を支援する
- ITのリーダーシップを多様性と組織文化の変革に集中させてデジタル・ビジネス・トランスフォーメーションを加速させ、ポジティブフィードバックを提供することで、さらに前向きな職場環境をもたらす