数多くのSFA(営業支援システム)が存在するが、営業活動報告や日報・週報などの入力に煩雑さを覚える営業担当者は少なくない。営業活動を管理するマネージャーの業績予測を妨げる一因となり、ひいては企業自身の業績に悪影響を与えてしまう。2020年2月9日にVymo(バイモ)の日本法人となるVymo Japan 代表取締役社長に就任した原沢滋氏は、「一説には2~3割と言われるデータ入力をVymoで10割に押し上げる」ことで、現場の営業担当者や日本企業を支援したいと述べた。

Vymo Japan 代表取締役社長に就任した原沢滋氏
2013年に元コンサルタントのYamini Bhat氏と、Googleでモバイルアプリケーションの開発に携わっていたVenkat Malladi氏がインドで創業したVymoは、スマートフォンで営業担当者の活動を記録して、進行報告を自動化する社名と同じソリューションを提供している。同社は現場の営業担当者がSFAやCRM(顧客関係管理)を使わない場面を目にして、「(営業の)現場をハッピーにしたい」(Bhat氏)との理由から、顧客訪問後にスマートフォンで営業の進行状況を報告できるVymoの開発に着手した。2016年11月にはシンガポール、2019年2月にはタイ、インドネシア、ベトナム、日本に進出。2020年2月には米国にも進出したが、コロナ禍で最高経営責任者(CEO)のBhat氏と最高技術責任者(CTO)のMalladi氏は渡米できず、今後の展開も未定だ。
Vymoはスマートフォンの位置情報機能を使用し、事前に設定した任意の時間、250メートル以内の場所に滞在すると顧客訪問と見なし、SalesforceやMicrosoft Dynamics 365から取得した顧客の住所を測定して、顧客訪問か否か利用者に確認を促す。メモ機能はスマートフォンの音声認識機能を利用して、「来週月曜までに見積書を提出」といった記録も文字化してテキストで残せる。
1つのオフィスビルに複数の企業が入居している場合は、優先度を付与して選びやすくした顧客リストから訪問先企業の選択も可能。Vymoから発信した通話時間を活動履歴として自動記録する機能も備える。位置情報を利用した活動データ履歴記録機能と同じく、記録を残すか否かの選択やメモ機能も搭載。営業担当者としては「(行動を企業から)監視されているように見えるが、(前述の通り)記録の有無は利用者が選択できる」(原沢氏)

営業担当者、マネージャー視点のVymoによる利点
Microsoft Outlookで送受信したメールを活動データ履歴として自動記録する機能も備える。メールは個人に届くため、属人化しやすく、担当者が退職・異動すると「顧客とのコミュニケーションが不明確になってしまう。Vymoは顧客とのコミュニケーションを可視化し、Salesforceのアクティビティーログと連携」(原沢氏)することで効果を発揮する。2021年春にはVymoの位置情報データとOutlookのカレンダーを自動同期し、顧客訪問が正しく行われたのか確認する機能やオンライン会議ツールとの連携も予定している。
現時点ではCisco WebexとLINE WORKS、Zoomが候補に挙がっており、「(現在の主力顧客である)金融・保険業界はセキュリティの観点から、WebexやLINE WORKSを使うことが多いため、まずは両者(への対応に着手)。その後、Zoomに対応する」(原沢氏)
インドおよび日本リージョンのMicrosoft Azureで稼働するVymoだが、既に国内でも2020年時点でシステム構築から運用を開始し、1000人以上の利用者を持つ。日本市場での展開としてVymo Japanは、「SI(システムインテグレーション)、販売代理店、システムパートナーと3種のパートナービジネスが中心となり、Vymo単体で売るのではなく、SFA/CRMと連携していく」(原沢氏)と説明し、SIパートナーとして、アビームコンサルティングや三井情報と提携締結済みであることを明かした。
さらに顧客の業種に合わせたカスタマイズソリューションに加えて、一定の機能を標準化させた「Vymo Sales Standard」の2021年春リリースを予定している。また、金融機関による保険販売を支援する「Vymo Insurance Banca」、保険外交員の営業活動を支援する「Vymo Insurance Direct」、保険代理店を管理する「Vymo Insurance Agency」、回収業務時の訪問活動に特化した「Vymo FinServices」を、それぞれ日本の商習慣に沿った改善を施しながら国内市場で展開する。

Vymoによる営業支援強化サイクル
アジアを中心に60を超える組織で12万人が利用するVymoだが、フランスの保険・金融グループであるAXAは、導入後6週間でリードコンバージョンが25%増加。アジアやオセアニアで生命保険・金融サービスを提供する香港のAIAグループは、パートナーのカバー率が15%向上。国際金融サービスのSun Lifeは1年でセールスエンゲージメントを2.5倍に増加させた。