オートメーション・エニウェア・ジャパンは2月16日、2022会計年度の戦略記者説明会を開催した。カントリーマネージャーの由井希佳氏が日本市場における重点領域を明らかにした。
オートメーション・エニウェア・ジャパン カントリーマネージャの由井希佳氏
会見の冒頭で由井氏は最新の市場動向を説明した。それによると、90%の組織が RPA(ロボティックプロセスオートメーション)の取り組みを開始しており、63%の組織がRPAの利用を拡大している途中にあるという。ただ、今日の典型的な組織では、従業員の9.9~14.1%のみが業務にBotを利用しているのにとどまる。57%の組織が今後12カ月間でRPAへの投資を増やす予定だという。
RPAを社内で展開する際の最大の障壁は経験とスキルの不足にあり、RPA導入にこなれた組織は、従業員のスキル不足の解消にトレーニングプログラムとオンラインコースのアプローチを取るのが一般的だということも分かった。
Enterprise Technology Research(ETR)と共同実施した調査「Now & Next: State of RPA report」のサマリー
同社の顧客企業からのインサイトとして、由井氏は「これまでの企業は定型業務の効率化としてIT、人事、財務、総務などのバックオフィスを中心としたユースケースが多かった。最近ではグローバルパンデミックの影響やCX(顧客体験)への取り組みからフロントオフィス業務の自動化が増えつつある」と説明した。
こうした状況を踏まえ、由井氏は「企業は生産性・競争力を高めるためにデジタル化を生かし切れていない」と指摘し、スピードが速く変化の激しいDX(デジタル変革)時代は人材育成がキーファクターになるとの見解を示した。その上で、同社では「デジタル化」「自動化」「トランスフォーム」という3つの切り口で今後の施策を展開していくという。
2022会計年度の事業戦略
新型コロナウイルス感染症の影響によってデジタル化が加速した一方、社内には紙帳票を中心とした業務プロセスがまだ多く残っている。そうした紙帳票をデジタルデータに変換することで、業務全体を自動化する。
直近では、2021年2月に「IQ Bot Tegaki」をリリースしている。これは、オートメーション・エニウェアのAI(人工知能)ソリューション「IQ Bot」とコージェントラボのAI OCR(光学文字認識)サービス「Tegaki」を連携させたもの。IQ Botが内蔵するOCRエンジンの選択肢にTegakiが加わり、手書きの日本語・韓国語を高い精度で抽出可能になる。
会見では、IQ Botのユースケースとして、システムサポートの事例が紹介された。同社は従来、400種類に及ぶ請求書と経理システムの突合処理を目視でチェックしており、3人が各8時間、計24時間をかけていた。これをIQ BotとRPAに置き換えることで、1人が3時間で処理できるようになったという。
自動化に関しては、2019年10月にリリースしたウェブベースのRPAプラットフォーム「Automation Anywhere Enterprise A2019」でユーザー部門のBot開発を加速させる。Enterprise A2019は、ビジネスユーザーでも直感的に使える分かりやすいモダンなウェブベースのユーザーインターフェース(UI)をウリにしており、さらにIT部門や推進部門(CoE)、オンライントレーニングの支援を通じて日々の業務プロセスや業務アプリのエキスパートであるユーザー部門によるBot開発の内製化を推進していく。
2020年3月には、AIが自動化に適した業務プロセスを発見し、Botを自動生成する「Discovery Bot」を発表している。これにより、業務プロセスの文書化やBot作成の時間を短縮する。また、2020年10月に発表した業務向けのデジタルアシスタント「Automation Anywhere Robotic Interface」(AARI:アーリ)によってリアルタイムかつインタラクティブなBotの実行を可能にし、自動化を全ての人に利用可能にするとしている。
トランスフォームについては、「全てのお客さまを変革ステージへ」を掲げ、従来多くの人が関与して非常に多くの時間を費やしていた業務プロセスを変革し、デジタルワークフォースによって複雑な業務をシンプルにしていくと由井氏は話した。
従来の業務プロセス
デジタルワークフォースを活用した業務プロセス
その他にも、日本のエンタープライズ顧客向けに拡張サービスレベルを付与したプレミアムサービスの提供を開始することをはじめ、日本語による情報発信の強化、国内開発ベンダーとの協業、国内データセンターの拡充なども施策に挙げられている。