従来の指揮統制型のリーダーシップスタイルは廃れ、アジャイルマネジメントが新たなトレンドになりつつある。
この柔軟な形のリーダーシップは、アジャイルソフトウェア開発の原則を組織運営にも適用し、分散的な意思決定に任せるというものだ。このスタイルを支持している人々は、タスクをより小さな部品に分割し、計画と実行を統合することで、要件の変化に効果的に対応するのに適したマインドセットを生み出せると主張している。
アジャイルマネジメントは、ソーシャルディスタンスが求められ、地理的に離れた場所で働くリーダーとチームが変化の激しい状況に素早く対応する必要がある状況に適したやり方であることが証明されてきた。
もはや上司は、常に部下の行動に目を光らせていることは(仮にそうしたいと思っても)できなくなっている。従業員は物理的に離れた場所で働いており、しかもそれぞれが複雑で多様な優先事項を抱え、それらの間のバランスを取らなければならない状況に置かれている。アジャイルマネジメントには2つのメリットがある。1つめは従業員をエンパワーする(研究によれば働き手はそれを強く望んでいる)こと、そしてもう1つは、リーダーが、戦略の改善や新たなビジネスモデルの開発などのより高度な作業に集中する時間を取れるようになることだ。
アジャイルのメリットは明らかであるようにも見えるが、部下やプロジェクトを細かく管理していた一部のリーダーにとっては、緩やかな形態のマネジメントへの切り替えは衝撃的な体験になるだろう。コンサルティング企業Ernst & YoungのパートナーであるRob Doepel氏は、部下に対するコントロールを手放すのを難しいと感じる場合もあるだろうと述べている。
「大きな変革を行い、今までとは大きく異なる業務形態に移行している間は、少し気楽に考える必要がある。なぜなら、その変化は困難で時間がかかるものであり、誰もが同じペースで移行できるわけではないからだ」と同氏は言う。
では、部下を自由に働かせ、効果的なアジャイルなリーダーシップのスタイルを生み出すのにはどうすればいいのだろうか。ここでは、最近開催されたThe Economist主催のオンラインイベント「Innovation@Work」に登壇した2人のビジネスリーダーが語った、持続可能で効果的なアジャイルマネジメントを実現するためのベストプラクティスを紹介しよう。
他人に奉仕する
保険会社Direct Lineのマーケティングおよびデジタル化担当マネージングディレクターMark Evans氏によれば、効果的なアジャイルマネジメントはいわゆるサーバントリーダーシップだという。サーバントリーダーシップとは、リーダーの主な仕事は部下のために働くことだというリーダーシップの考え方だ。