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データ統合の新潮流「データ仮想化」とは

第3回:セキュリティとガバナンスに不可欠なデータ仮想化--多様なデータソースをシングルポイントで管理

小川直樹 (Denodo Technologies)

2021-03-01 07:00

 2018年6月、ハッカーによってSingHealthのデータベースから患者150万人分の個人データが盗まれました。これにはシンガポールのLee Hsien Loong首相の個人データも含まれていました。その結果、SingHealthとシンガポールの公共医療セクターのIT代理店であるIntegrated Health Information Systems(IHIS)は、それぞれ25万シンガポールドルと75万シンガポールドルの罰金を支払うことになりました。シンガポールの個人情報保護委員会(PDPC)によって課された罰金として過去最高額でした。

 どのような業界のビジネスでも、顧客や潜在顧客に関するデータを収集して管理する必要があります。特に公共セクターの企業は、自社のデータベースやデータウェアハウスに膨大な量の公共情報を保存しなければなりません。これまで、公共セクターは顧客情報を強力に保護するため、顧客データをクラウドへ移行することに関して非常に慎重な姿勢を取ってきました。しかし、パブリッククラウドの評価が高まったことで、現在は多くの公共セクター企業がオンプレミスとパブリッククラウドの両方にデータを保管しています。そうした流れを受けて、民間企業も現在はオンプレミスとクラウドの両方にデータを保管し始めています。

 民間企業にはかつてないほど大量な個人データと財務データが保管されています。SingHealthへの攻撃後、シンガポール政府は現行の個人情報保護法(PDPA)に対する修正案を提示しました。新たな修正案では、データ漏えいの発生時には個人とPDPCの両方に報告することが組織に義務付けられます。

 シンガポールのPDPAは2021年2月1日に改正されました。PDPAや欧州の一般データ保護規則(GDPR)などのデータ規制法により、企業はプライバシーに配慮したアーキテクチャーを組み入れながら、新たなデータアクセスまたは管理インフラストラクチャーレイヤーを設計することを余儀なくされています。

 世界中の組織が、オンプレミス、クラウド、レガシーシステム、そして最新のデータソースを含む多様なインフラストラクチャーに渡ってセキュリティおよびガバナンスのプロトコルを管理するための効果的な方法を必要としています。

 データ仮想化はデータ統合テクノロジーの1つです。セキュリティとガバナンスに対して優れた制御機能を備えており、企業がコストやROI(投資対効果)を最適化しながらリアルタイムでデータにアクセスすることも可能にします。

 大半のデータ統合ソリューションでは、データのコピーを異なるデータソースから新たな統合用ソースに移動しますが、データ仮想化は全く異なるアプローチを提案します。データ仮想化では、データを移動するのではなく、ソースデータはそのまま残しながら、統合されたデータのビューをリアルタイムで提供します。

 つまり、企業はデータの移動や保管にコストをかけることなく、データ統合の全てのメリットを享受できます。また仮想化されたビューは、データが保管されている場所やシステムの種類など、アクセスの複雑さを抽象化し、メンテナンスおよびモダナイゼーションのイニシアチブを促進します。

 データ仮想化は異なるソースを覆うレイヤーとして展開され、組織全体に対する単一のデータアクセスレイヤーとして機能するため、セキュリティ、プライバシー、ガバナンスのプロトコルの管理などを単一の制御ポイントから可能になるというメリットもあります。

 組織は全面的に全てのユーザーまたは選択したユーザーなど、必要に応じてユーザーごとに社会保障番号を隠すといったことができます。このような手段には、ボリューム制限または時間制限などのデータアクセスを部分的に隠すことにより、データポイントの内容を非表示にすることも含まれます。これにより設定した期間またはボリュームにアクセスが制限されるため、データ漏えいの影響および可能性を最小限に抑えることができます。

 このように、仮想レイヤーがあることで、世界中に支社を持つような企業も、ビジネス継続性に影響を及ぼすことなく、国際的なプライバシー法を順守することが可能になります。データ仮想化は、単なるデータ統合基盤にとどまらず、セキュリティやガバナンスの観点からもその有用性が見てとれます。

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小川直樹
Denodo Technologies シニアマーケティングマネージャー
プログラマーから始まり、大手外資系ソフトウェアベンダーにて、ストレージソフトウェアを中心にプリセールス、プロダクトマーケティング等を担当し、2008年よりジュニパーネットワークスにてソリューションマーケティングマネージャー、2015年からはSonicWALLにてフィールドマーケティングマネージャーなど歴任。2019年からDenodo Technologiesにて現職。

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