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D-Waveの量子コンピューターが新たなシミュレーションで古典的手法を圧倒--その意義

Daphne Leprince-Ringuet (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2021-03-01 06:30

 量子コンピューティングの企業であるD-Wave Systemsの研究者らは、量子アニーリングと呼ばれる手法を用いることで、一定の材料のシミュレーションを古典的な手法の300万倍高速に行えることを示した。

 D-Waveの研究者らはGoogleの研究者らと共同で、D-Waveの量子アニーリングプロセッサーを使用したシミュレーションの性能を計測した結果、シミュレーションのサイズと問題の難易度の両方に対して性能が向上し、古典的なCPUで実現可能な速度の数百万倍の速度が得られることを明らかにした

 D-WaveとGoogleのチームが実行した計算は、現実世界の問題だ。実際、この問題は、2016年に量子磁気システムで発生するいわゆる「エキゾチック磁性」の振る舞いについての研究でノーベル物理学賞を受賞したVadim Berezinskii氏、J. Michael Kosterlitz氏、David Thouless氏によってすでに解決されている。

 これらのノーベル賞受賞者は、1970年代に高度な数学的手法を用いて2次元量子磁石などの性質を説明し、物質が奇妙な(「エキゾチック」と呼ばれる)状態を取り得ることを明らかにした。

 今回のD-Waveの研究では、量子超越性(古典的な計算手法では解決できない問題を量子コンピューターで解決できることを証明すること)を主張するのではなく、同社の量子アニーリングプロセッサーを利用することで優れた計算性能を得られることを示した。

 D-Waveの性能研究ディレクターAndrew King氏は、「この研究は、D-Waveのプロセッサーを使用することで、量子効果によって優れた計算能力が得られることを明確に示した」と述べている。

 D-Waveのプロセッサーは、最適化問題の解決に使われる量子コンピューティング技術である量子アニーリング技術を使用したものだ。この技術には解決できる問題の範囲が限定的だという見方はあるものの、量子アニーリングプロセッサーは量子ゲートを用いたプロセッサーと比べて制御や操作が容易で、D-Waveの技術はすでにIBMやGoogleなどの大企業が作ったデバイスよりもずっと多くの量子ビットを扱える段階に達している。

 King氏らのチームは、エキゾチック磁性のシミュレーションを行うために、D-Waveの2000量子ビットのシステム(最近になってノイズを減少させるために修正された)を使用して、Berezinski氏、Kosterlitz氏、Thouless氏らが1970年代に行ったのと同じように、物質の通常では見られない状態を観察するためのプログラム可能な量子磁気システムのモデルを作成した。またKing氏らは、この種のシミュレーションを行うための古典的な手法である「経路積分モンテカルロ法」(PIMC)と呼ばれるアルゴリズムを用いたプログラムも作成し、量子コンピューティングを使用した結果と通常のCPUで実行した結果を比較した。数字を見れば分かる通り、量子シミュレーションの性能は古典的な手法を大きく上回った。

 「この結果は、(量子アニーリングに)絶対的な意味で大きなメリットがあることを示している」とKing氏は言う。「このシミュレーションは、科学者が過去に、私たちが今回比較対象に用いたアルゴリズムを使って実際に取り組んだ問題だ。これは大きなマイルストーンであり、今後の開発のための重要な基礎になる。D-Waveの低ノイズプロセッサーがなければ、今日の成果は実現しなかっただろう」

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