本人と誤認識する確率である「他人受入率」は指1本で認証するH-1で100万回に1回だが、指3本で認証するC-1で6250万回に1回の精度を誇る。開発時の苦労として夏目氏は「指をかざして確実に指静脈を認証させる点。反射型赤外線で撮像した背景画像から指の形を切り出し、指の位置をカメラ(の画角)に納めることに苦労した」と振り返った。
生体認証SDKは、自宅やコワーキングスペースなどでWindows PCからSaaSなどを利用する際、パスワードレス認証や指静脈を用いた電子署名を実現可能とする。当然ながら業務アプリケーションなどから指静脈認証を連携する場合はソフトウェア開発が必要となる。
C-1は指3本に対して、生体認証SDKは親指以外の指4本で指静脈認証を実行する理由として夏目氏は「可視光で指静脈画像を抽出するための技術的難易度が高いため、より多くの指から画像を抽出して確実に認証する」と説明した。
ノートPCなどが内蔵する720p/30fps以上のフロントカメラを用いることを想定しているが、「画質が低く、使用に適さないものもある。事前の動作確認ツールを用意している」(夏目氏)
可視光の画像から色情報を用いて静脈パターンを抽出する技術を採用。夏目氏は「指をかざす距離は7~8cm程度。他社のカメラを使って確実に抽出する画像処理でも苦労し、コロナ禍も相まって開発メンバーのリモート対応という開発体制で製品化にたどり着けた」と苦労を語った。
米MarketsandMarketsの生体認証に関する2020年版の市場調査レポートを夏目氏は引用し、「2020年時点では366億ドルだが、5年後の2025年には、年間成長率13.4%の686億ドルまで拡大」する市場を見据え、生体認証事業を国内外で推進する。
まずは東芝テックとともに2次元コードにも対応するC-1を、コンビニエンスストアやスーパーマーケットへの導入を展開。クマヒラとはオフィスの入退管理、無人決裁システムによる流通や小売りへの展開を目指す。香港での指静脈決済実証実験や欧州での本人認証の実証実験、PCカメラを用いた顔認証などを通じて「5年間で500億円の事業規模」(夏目氏)と目標を掲げた。
※クリックすると拡大画像が見られます