Lockheed MartinとNECは、宇宙船開発にNECのAI(人工知能)技術「インバリアント分析」を導入することで合意した。両社は同技術について、複数年にわたるライセンス契約の締結を検討している。
インバリアント分析は、大量に収集したセンサーデータの中に埋もれている、システムの特徴を表す普遍的な関係性(インバリアント)を検知するAI技術。対象プラントシステムの専門的な知識・知見に頼らずに自動的かつ網羅的に抽出してモデル化し、モデルと一致しない「いつもと違う」挙動をサイレント障害として検知する。
Lockheed Martinの宇宙部門であるLockheed Martin SpaceとNECの共同開発チームは、宇宙船の初期製造試験と運用シナリオにおいてインバリアント分析技術の有効性を評価した。この結果、同技術をLockheed Martin Spaceのデータ分析システム「T-TAURI」に統合し、宇宙船の設計、開発、製造、試験の各段階におけるシステムの異常予兆検知に用いることを決定した。これにより開発チームは、システムの徹底的かつ包括的な理解に加えて、将来的にはデジタルツインなどの高度な基盤システムも構築できるようになる。
Lockheed Martinが開発中の有人宇宙船「Orion」(左)とOrionから収集したデータを分析する様子(右)
両社は、インバリアント分析技術を統合したT-TAURIを用いて、Lockheed Martinが開発している有人宇宙船「Orion」の試験で生成された大量のデータを分析した。具体的には、約15万個のセンサーのデータから、4時間以内に220億以上の論理的な関係性を抽出し、通常動作のモデルを構築した。このモデルを使用して、今後のOrion開発における全ての試験を監視し、予想される動作と実際に起きた異常動作を比較して原因分析に役立てていく。