2020年に創業したLazuli(文京区)は、人工知能(AI)を活用して商品情報を収集、整理、拡張するクラウドサービス「NINJA」を提供。同社は3月4日、新しいクラウドサービス「Lazuli Inside」「Lazuli Platform」の展開を開始したことを明らかにした。
Lazuli 代表取締役 CEO/CTO 萩原静厳氏
同日に開かれた記者会見で代表取締役 最高経営責任者(CEO)で最高技術責任者(CTO)の萩原静厳氏は創業理由として、「(製造や開発、仕入れ、販売などに応じた必要情報を格納した、企業が商品を管理するための大本となるデータである)商品マスターに起因する課題がさまざまな企業で顕在化している」との認識を示している。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)の世界観でデータを使いやすい状態にして、生産性向上やグローバルプレーヤーと競争できる基盤を構築したい」(萩原氏)
情報分析やマーケティングを阻害
Lazuliは企業が抱える商品マスターデータの課題として、「商品マスターデータの作成・管理コスト」「商品マスターデータの未整備」の2点を掲げている。萩原氏は「部署間の情報連携、取引先など企業間の情報連携にコストが発生し、未整備時は情報分析やマーケティング、DXを阻害している」と指摘した。
コスト面に目を向けると、とある大手卸事業者は商品マスターデータを表計算ソフトで作成、そのコストは年間約8億円におよぶという。商品の特長を検索キーワードに使える某ECサイトは、手作業でキーワードを整備しており、その人件費は年間約5000万円を超える。
また、食品・飲料系大手メーカーは競合商品の情報を手作業で収集し、20~50人規模でデータを更新し続けているという。加えて、商品開発部門やマーケティング部門など各部門が個別に作業しているため、結果的には同じ商品マスターデータを生み出す結果になった。
商品マスターデータ未整備の文脈では、某大手スーパーマーケットなどの例を披露した。同社は複数の販売企業と店舗情報を紐付け、仕入れた商品の管理コードを採番しているが、そのルールが販売企業によって異なるため、全社横断の分析を阻害する要因になった。販売頻度の低い商品を扱うECサイトは、顧客の購買・行動データが少なく、関連する商品を正しく推奨できないでいる。
Lazuli CXO 國貞航氏
本誌読者もECサイト利用時に「なぜこの商品がレコメンドされるのか」と疑問に感じた方も少なくないだろう。
Lazuli 最高顧客体験(Chief eXperience Officer:CXO)の國貞航氏は「商品情報を正しく活用すれば、異なる顧客体験を提供できる可能性は高い」と指摘。DX推進は非IT企業を含めた国内企業の急務だが、「根本的な商品マスターデータを管理できず、そこから着手しないとDXを始められない」と指し示した。
NINJAは「NINJA CR」「NINJA AI」「Ninja DB」で構成。NINJA CRは、公開されている商品情報からデータを取得して、消費者目線のさまざまな情報、商品の特徴を表現する情報などをメタタグとして保有している。