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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

QRコードで成功した杭州市の取り組みあれこれ

山谷剛史

2021-03-16 07:00

 新型コロナウイルス感染症の拡大に直面した中国では、緑色・黄色・赤色の3色いずれかの色で表示されるQRコード「健康碼」(健康コード、発音はジェンカンマ)を用いて感染対策に努めた。スマートシティーとシステムがつながっており、支付宝(アリペイ)や微信(ウィーチャット)に表示された健康コードが緑色なら自由に活動できるが、赤色ないし黄色で表示される人は隔離や治療が必要になるというものだ。

 健康コードが最初に導入されたのが浙江省杭州市だ。中国の巨大IT企業である阿里巴巴(アリババ)の城下町であり、同社のスマートシティー基盤「城市大脳」が導入されている。そんな杭州市がアリババと提携し、2020年2月中旬に健康コードの利用を開始した。その後、中国全土にサービスが広がっていった。

 杭州市では、健康コードの導入前からQRコードを使ったサービスに積極的だった。健康コードが中国全土で使われるようになってからは、杭州発のQRコードサービスを全国に普及させようとする動きがますます強まっている。

 2015年には「QRコード門牌」というサービスが登場。これは建物にQRコードが印刷された表札を設置し、それを読み取ると建物情報や入居企業の詳細のほか、地名の由来・歴史などの豆知識や周辺の地下鉄駅、バス停、レンタサイクル(当時、シェアサイクルはまだ街中で普及していなかった)が分かる地図が確認できるというものだった。

 現在、中国で当たり前になった地下鉄のキャッシュレス乗車、つまりスマートフォンに表示されたQRコードを自動改札機にかざして通過する仕組みも、杭州市が2017年に初めて導入した。

 2019年には、消費者センターへ苦情を報告するためのQRコードを杭州市内の12カ所の住宅地に設置。これで何か問題が発生したときに、消費者センターまで足を運ぶことなくスマートフォンで相談することができるというわけだ。既に当時からオンライン化されていたのだが、QRコードを集合住宅の掲示板のような共用部に出すことで、行政サービスを気軽に利用できるというアピールになる。

 同じく2019年11月には、杭州市西湖区が役所での手続き方法をQRコード化した印刷物「西湖区弁事宝典」を35万部発行し、家庭や企業に配布した。1ページあたり12~20個程度のQRコードとその簡単な説明が列挙されている。1冊には計1323個のQRコードがまとめられている。それらのQRコードをスキャンすることで、紙の無駄を減らしつつも、役所が提供する生活サービスを詳しく知ることができる。

 そして、新型コロナウイルス感染症の拡大が一息ついてから、杭州市は健康コードに続く成功を収めようとさまざまなQRコードを使ったシステムを考案する。

 まず、2020年5月に健康コードを発展させた「浙変色健康碼」(浙江省変色健康コード)というものを発表する。これは、従来の3色によるものではなく、緑色から黄色、赤色へとグラデーションでステータスを表示するというものだ。電子カルテのデータや運動・飲酒・喫煙の有無、睡眠時間などの情報をスコアリングして色分けする。ただし、これはインターネットで大変な不評を買い、導入には至らなかった。

 7月には「老兵碼」(退役軍人コード)が登場する。これは、アリペイ内で申請して条件を満たすと交付されるQRコードを表示させることで、退役軍人向けの優先サービスを受けられるというものになる。例えば、鉄道の切符を購入する際に優先レーンに並べたり、一部のスーパーで割引サービスを受けられたり、一部の駐車場を無料で使えたりする。これが導入されているのはまだ杭州市だけのようだ。

 8月には「餐飲企業健康碼」(飲食企業健康コード)が登場する。これは食堂に貼られたQRコードで、営業許可証や企業情報のほか、スタッフの健康証明書や食品添加物、安全検査結果などが表示されるというものだ。食の安全への取り組みでは、2021年2月に輸入冷凍肉のパッケージにQRコードを貼り付け、読み取るとブロックチェーンで生産流通データを記録した「浙冷鍵」(浙江省冷凍食品ブロックチェーンコード)を発表している。

 交通関係では、2021年1月にタクシー向けに「杭州平安的士防疫二維碼」(杭州平安タクシーコロナ対策QRコード)をリリース。これは乗客がタクシーを利用する際にQRコードをスキャンし、自分の氏名や電話番号といった情報を入力するというもの。運転手も乗客も健康コードが安全な緑色でなくてはならないが、念のために乗客情報を記録しておくのだという。

 このように杭州市は矢継ぎ早に新しいQRコードを使ったサービスを立ち上げ、試行錯誤を繰り返している。今のところ、健康コードのほかに中国全土に展開できているサービスはないが、その姿勢は称賛されるのではないか。使えそうなアイデアがあれば、日本でもアレンジして導入してほしいと思う。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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