本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の山野修氏と、日本IBM 執行役員IBMセキュリティー事業本部長の纐纈昌嗣氏の発言を紹介する。
「アカマイは有数のセキュリティベンダーだ」
(アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の山野修氏)
アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の山野修氏
アカマイ・テクノロジーズは先頃、2021年の事業戦略についてオンラインで記者説明会を開いた。山野氏の冒頭の発言はその会見で、同社がセキュリティ分野で存在感を高めつつあることを強調したものである。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。
同社の親会社である米Akamai Technologiesは先頃、2020年12月期の業績を発表し、売上高が前期比11%増の32億ドルと初めて30億ドルを超え、このうちクラウドサービスとして提供している「セキュリティ」事業が同25%増の10億ドルを超えたことを明らかにした。
山野氏によると、「セキュリティ事業の売上高だけで10億ドルを超えるベンダーはグローバルでも数社しかないことから、当社は有数のセキュリティベンダーに名を連ねる形になった」とのこと。同氏自身が長らく複数のセキュリティベンダーの経営に携わってきた背景もあって感慨深そうな表情を見せた。
日本法人の売上高は公表していないが、山野氏は図1のように売り上げ構成比の推移をグラフにして示した。同社はこれまでセキュリティとともに、コンテンツを配信する「メディア」、ウェブサイトのパフォーマンスを向上させる「ウェブパフォーマンス」の3事業を展開してきたが、2020年は2016年に比べて全売上高が1.9倍となる一方、構成比については3事業の中で最も伸びたセキュリティが34%を占める形となった。この結果、3つの事業がほぼ3分の1ずつとなり、「会社としては非常にバランスの良い事業構造になった」(山野氏)という。
図1:アカマイ・テクノロジーズの売り上げ構成比の推移(出典:アカマイ・テクノロジーズ)
こうしたバランスの良い事業構造になった理由として、同氏は「巣ごもり需要によるオンラインシフト」「テレワークの増加とゼロトラスト市場の急成長」「進化したサイバー攻撃の増加とセキュリティ意識の高まり」といった3つを挙げた。
ただ、そのバランスの良い事業構造も、セキュリティの好調ぶりから見ると、これからまた変化していくのではないか。会見の質疑応答でそう聞いてみると、同氏は次のように答えた。
「セキュリティ事業については今後も高成長を目指しており、当社としてはグローバルでも日本でも売り上げ全体が伸びる中で、半分の割合にしていこうという方針を掲げている。そうなると、当社はセキュリティベンダーとして認知されるようになるだろう」
ちなみに、他の2つの事業はこのほど「エッジテクノロジーグループ」として統合された。同社は今後、セキュリティとエッジが事業の主軸となる。その変身ぶりを引き続き注視していきたい。