日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR)は3月18日、1月に共同実施した「企業IT利活用動向調査2021」の一部結果を速報として発表した。コロナ禍に伴うクラウドや電子契約の利用増が明らかになった。
調査は国内企業981社のITや情報セキュリティの責任者を対象に行なったもの。この速報では、前回(2020年7月調査)、前々回(2020年1月)の調査結果とも比較した。
まず電子契約の利用企業は、前回の41.5%から67.2%に拡大し、今後の予定を含めると、8割強が利用する見込みであることが分かった。クラウドサービスの利用範囲も、企業システムを全てクラウサービス利用している企業が前々回調査から2ポイント強増え、大半や半分程度のシステムをクラウド化した企業の合計は37.0%から45.5%に上昇、コロナ禍によるテレワーク勤務の進展で、クラウドサービスを利用したシステムにシフトしていることが考えられるとする。
クラウドサービスの利用状況の推移
また、重視する経営課題は「業務プロセスの効率化」「従業員の働き方改革」「情報セキュリティの強化」が上位3つだが、割合は過去2回で減少した。一方で「営業力の強化」や「企業間(グループ、業界、取引先間)の情報連携」の割合が上昇した。働き方改革の取り組みでは「テレワーク制度の整備」(45.6%)、「在宅勤務制度の整備」(41.3%)、「働き方改革に伴うITシステムの導入」(40.3%)が拡大した。
しかしセキュリティでは、「インシデントは経験していない」企業が、前々回の28.2%から24.2%に大幅に減少した。特に「USBメモリー/記録媒体の紛失・盗難」「非デジタル文書の紛失・盗難」の割合が増加した。
総務省と経済産業省が2020年8月に策定した「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブック」の内容の認知度は60.6%に上ったが、活用している企業は11.0%にとどまった。
調査結果についてITRのコンサルティング・フェローの藤俊満氏は、「今後、勤務形態は完全なオフィス勤務に戻るのではなく、オフィス勤務とテレワーク勤務のハイブリッド型の勤務体制が一般化すると思われる。システムのクラウド化はさらに進展していくため、セキュリティ対策は現行の境界型防御スタイルからゼロトラストネットワークと呼ばれる次世代のセキュリティアーキテクチャーに進化すると見ている」とコメントしている。