MicrosoftとAccentureの合弁会社となるAvanadeは、世界3万人以上の従業員を有し、日々顧客のテクノロジー課題や経営課題と向き合っています。これから注目すべき“新興技術(エマージングテクノロジー)”に関するトレンドを世界中のキーパーソンを対象に調査し、結果を毎年公表しています。2020年の調査では、企業がすでにエマージングテクノロジーから多大なる恩恵を受けていることがわかりました。
調査は、Avanadeがオーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、日本、イギリス、アメリカのそれぞれ100人、計800人の経営幹部と意思決定権者を対象に、2020年の6~7月に実施しました。
モノのインターネット(Internet of Things:IoT)や会話型人工知能(AI)のような確立された技術から、人間の「能力拡張(例:脳とコンピューターのインターフェース)」や「バイオコンバージェンス(バイオテクノロジーとソフトウェアエンジニアリングのクロスオーバー)」のような、あまり定義されていない技術まで多岐に渡る12の技術について質問しています。
これらのテクノロジーは成長サイクルが比較的早く、大きくビジネスを変革する可能性があります。一方、経営者はどのテクノロジーに投資すべきかで何が期待できるかを慎重に考えるとともに、自分たちの投資が同業他社に比べて進んでいるのか遅れているのか知りたいのではないでしょうか。
調査結果をもとに導き出した「2021年、ITとビジネスに関わるリーダーが心に留めておくべき5つの重要ポイント」を紹介しましょう。
ポイント1:早期に、頻繁に、組み合わせて、エマージングテクノロジーの価値を最大限に引き出す
回答者の97%は、エマージングテクノロジーのうち少なくとも1つの技術の実証実験を実施、または取り入れたと回答しています。トップパフォーマーはエマージングテクノロジーに全力で取り組み、ほぼあらゆるところで実証実験されています。
また、エマージングテクノロジーから大きな価値を得る企業の6%は、他の企業よりも予算が多く、より多くのビジネスユニットにテクノロジーを展開しています。より頻繁にテクノロジーを組み合わせて実証実験し、デジタルトランスフォーメーション(DX)をより進めている傾向にあります。
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しかし、予算の大部分をエマージングテクノロジーの実現に費やす必要はなく、DXが成熟せずとも価値を得ることができるという興味深い結果が出ています。テクノロジーの種類にもよりますが、全回答者の77%から91%が少なくとも投資に見合うだけの価値を得ており、半数以上が実証実験したテクノロジーのうち少なくとも1つは大きな価値を得ていると回答しています。実証実験を始めるのに、早すぎる、または遅すぎるということはありません。
ポイント2:実証実験のポートフォリオには会話型のAIとAI認識を含める
IoTやエッジコンピューティングは、最も実証実験が実施されているテクノロジーでした。6つの主要業界のうち、5つの業界が最も一般的なテクノロジーとして挙げており、残り1つの業界でも2位となっています。
しかしここで注目すべきは、リターンを得ているより大きな価値を提供したテクノロジーは、実際には会話型人工知能(AI)と、顔や感情などを認識するAI認識です。
調査の結果は業界ごとの違いが見られます。例えば、金融サービス業ではブロックチェーンや次世代コネクティビティから大きな価値を得る可能性が高く、小売業ではロボット工学が会話型AIを上回り、大きな価値を還元していることがわかりました。
企業が受け取る具体的な価値も、業界によって大きく異なる場合があるでしょう。エネルギー企業や公益事業会社にとって、IoTやエッジは新しいビジネスモデルの創出や検証を支援する上で最も価値のあるものでしたが、消費財やサービス企業はコスト削減効果を感じていました。
なお、日本においてもIoTやエッジコンピューティング(63%)と会話型AIとAI認識(51%)が多く実証実験、または採用されたテクノロジーとなっています。