クラウドサービスの利用が拡大しており、企業システムを全てクラウサービス利用している企業は1年前の調査から2ポイント強増え、今回の調査では5.9%。また約半分超のシステムをクラウド化した企業の合計は、同じく1年前の37.0%から45.5%に上昇し、5割に近づきつつある。コロナ禍によるテレワーク勤務の進展でクラウドサービスを利用したシステムにシフトしていると推測している。

図5:クラウドサービスの利用状況の推移(出典:JIPDEC/ITR「企業IT利活用動向調査2021」)
調査結果を受けて、ITRのコンサルティング・フェローである藤俊満氏が以下のようにコメントしている。
「新型コロナウイルスの流行による緊急事態宣言が2020年4月に発令された際、多くの企業では在宅勤務、テレワーク対応を進めた。その後、一部の企業ではオフィス勤務への回帰も見られますが、テレワーク勤務はコロナ対策としてだけではなく、勤務形態のひとつとして捉えられつつある」
「システム面ではクラウド化が進み、半分以上をクラウド化した企業が5割に迫ろうとしており、今後もクラウドへの移行は続くと考えられる。電子契約は、前回調査の41.5%から67.2%に急拡大し、テレワーク対応が進んでいることが見て取れる」
「一方で、セキュリティインシデントが増加傾向にあり、主なインシデントとしては、マルウェア感染やUSBメモリ/記憶媒体の紛失・盗難、個人情報の漏洩・逸失などが挙げられる」
「今後、勤務形態は完全なオフィス勤務に戻るのではなく、オフィス勤務とテレワーク勤務のハイブリッド型の勤務体制が一般化すると思われる。システムのクラウド化はさらに進展していくため、セキュリティ対策は現行の境界型防御スタイルから、ゼロトラストネットワークと呼ばれる次世代のセキュリティアーキテクチャに進化すると見ている」
JIPDECからの依頼でJIPDECとITRが年1月13~15日に調査した。ITRの独自パネルに対するウェブアンケート形式で実施し、従業員数50人以上の国内企業に勤務しIT戦略策定または情報セキュリティ施策に関わる課長職相当職以上の役職者約9000人に対して回答を呼びかけ、981人の有効回答を獲得した(1社1人)。
情報セキュリティ対策の具体的な取り組み状況、製品やサービスの導入状況、認定や認証制度の取得状況など調査している。詳細は、JIPDECが5月下旬に発行予定の『JIPDEC IT-Report 2021 Spring』に掲載し、ウェブで公開する予定。