今週の明言

コミュニケーションプラットフォーマー「Twilio」日本法人の挑戦

松岡功

2021-03-26 11:39

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、Twilio Japan 代表執行役員 社長の今野芳弘氏と、日立製作所 執行役専務 サービス&プラットフォームビジネスユニットCEO(最高経営責任者)の徳永俊昭氏の発言を紹介する。

「顧客エンゲージメントをデジタルで支援していきたい」
(Twilio Japan 代表執行役員 社長の今野芳弘氏)

写真1:Twilio Japan 代表執行役員 社長の今野芳弘氏
写真1:Twilio Japan 代表執行役員 社長の今野芳弘氏

 クラウドを活用したコミュニケーションプラットフォームを提供する米Twilioの日本法人であるTwilio Japanは先頃、事業戦略およびデジタルコミュニケーションの調査結果についてオンラインで記者説明会を開いた。今野氏の冒頭の発言はその会見で、同社のサービスでユーザーに何を提供していきたいか、について述べたものである。

 Twilioは電話やSMS(ショートメッセージングサービス)、ビデオ、チャット、SNSなどのさまざまなコミュニケーション手段を、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)によってアプリケーションやビジネスへ容易に組み込むことのできるクラウドサービスを提供している。

 今野氏によると、その特徴は「一言でいうと、顧客エンゲージメントをデジタル技術でうまく構築していけること」にある。冒頭の発言は、このコメントを取り上げたものである。Twilioでは自らのクラウドサービスを「カスタマーエンゲージメントプラットフォーム」あるいは「コミュニケーションプラットフォーム・アズ・ア・サービス(CPaaS)」と表現している(図1参照)。

図1:Twilioのクラウドサービスの概要(出典:Twilio Japan)
図1:Twilioのクラウドサービスの概要(出典:Twilio Japan)

 会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言とともに、同社のユニークなサービスに注目したい。

 同社のサービスを端的に表したのが、図1である。同社は2008年の創業以来、ウェブアプリケーションから電話回線を使う技術やAPIが出現した初期の頃からAPIを提供。コミュニケーションに特化したAPIを豊富に取り揃えている。

 今野氏によると、Twilioの2020年度の売上高は176億ドルで、前年度に比べて55%伸びた。2016年度にニューヨーク証券取引所に株式上場しているので、業績は公開されているが、直近の高い成長率とともに、これだけの売上規模があるベンダーだとは知らなかった。従業員数は4600人超(2020年末時点)で、世界16カ国26カ所に事業拠点を持ち、データセンターも9地域27カ所に配備。顧客数は22万社超(2020年末時点)という。

 同氏の話で筆者が印象的だったのは、カスタマーエンゲージメントプラットフォームの役割についてだ。図2がそれを示したものである。要は、企業がビジネスゴールの達成に向けて「何を」「いかに」行っていくかという中で、「Twilioのサービスは『いかに』のところでお役に立てる」と強調した。面白い説明だと思った。

 ただ、日本法人は2019年8月に設立されたばかりで、同時に経営トップに就いた今野氏が手腕を発揮するのはこれからが本番だ。かつてアマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)のパートナ事業責任者として腕を振るった同氏の新たな挑戦に注目したい。

図2:カスタマーエンゲージメントプラットフォームの役割(出典:Twilio Japan)
図2:カスタマーエンゲージメントプラットフォームの役割(出典:Twilio Japan)

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