リモートアクセス環境を緊急開放--コロナ禍に迅速対応できた荏原製作所の成功要因とは - (page 2)

小山健治 藤代格 (編集部)

2021-04-02 07:15

クライアントレスでブラウザからアクセス

 非常に幸運でもあったわけだが、そもそも同社はどういった経緯からEAAを選定していたのだろうか。同社は従前リモートアクセスの仕組みとしてSSL-VPNを利用していたのだが、特に海外からの接続性が悪く代替手段を探していた。

 「2012年のCDN(コンテンツ配信網)サービス導入時から付き合いのあったアカマイに相談したところ、経路最適化の仕組みを利用できるセキュアなリモートアクセスの手段としてEAAを提案されたのです。試しに使ってみたところ海外拠点からのクレームも一切なくなり、導入を決めました」(千葉氏)

荏原製作所 情報通信統括部 ITアーキテクト部 後藤氏
荏原製作所 情報通信統括部 ITアーキテクト部 後藤氏

 加えて運用面からの決め手となったのは、クライアント設定不要のウェブブラウザ接続が可能であることだ。情報通信統括部 ITアーキテクト部 後藤菜穂氏は、「各自のPCのクライアントソフト(エージェント)をインストールする方式もありますが、すべてのユーザーに手順を説明したり、エラーが起こった際の問い合わせに対応したりするのは、現状のヘルプデスクの体制ではかなりの困難が予想されました。その点、ウェブブラウザからのアクセスなら誰でも簡単できます」と語る。

 実際、このウェブブラウザ接続方式を生かすことで、同社は今般のコロナ禍においてリモートアクセス環境を一気に全社に広めることができたわけである。

 そして現在、同社はEAAをリモートアクセスの手段のみならず、オンプレミスの業務アプリケーションやSaaSアプリケーションなど、約500種の業務アプリケーションの認証基盤としても利用している。また、EAAに次第に慣れてきたユーザーは、社内ポータルで公開するコンテンツをリモートから更新したり、操作上のわからない点をグループチャットで教え合ったりと、自ら積極的な活用を始めている。

 ただ、そこにもまったく課題がないわけではない。前述したウェブブラウザ接続ではクライアントサーバー型のアプリケーションや3D CADなどのどうしても利用できないアプリケーションがあり、リモートワークの阻害要因となっている。

 「そこでユーザーのリテラシーが高まってきたこのタイミングを捉え、順次エージェントの導入を進めているところです」と小和瀬氏は語る。リモートアクセス環境のさらなる拡大に向けて、同社は新たな歩みを始めている。

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