デジタルライフの普及により、悪いニュースばかりを追って延々とスクロールしたり、スクリーンタイムの増加によって家族との時間が犠牲になったり、悪い習慣に陥るのは簡単だ。これは仕事においても同様で、会議が通常の勤務時間を超えて長引いたり、チームのエンゲージメントの管理が困難になったりする。
コンシューマー分野のテック企業大手は、そうした問題に対応するために、個人のスクリーンタイムを管理できるツールを提供している。そしてCiscoは今回、仕事上のスクリーンタイムを管理できるよう、ビデオ会議プラットフォーム「Webex」で「People Insights」の機能を強化した。
新機能は、このビデオ会議ツールをどのように使用しているかを示す統計情報を提供する。これにより、会議を就業時間内に行うなど、特定の目標達成を支援する。また、会議にいつも遅れて参加している場合など、自身が気づいていなかった傾向も明らかにできるだろう。会議中に並行して、他の業務を行っているかや、誰と最も共同作業をしているかといったことも把握できる。
Ciscoによれば、この新機能はプライバシーを確保できるよう設計されており、ユーザーの個人的インサイトは自身のみが利用できる。
Ciscoのセキュリティおよびコラボレーション担当ゼネラルマネジャーでシニアバイスプレジデントのJeetu Patel氏は米ZDNetに対し、People Insightsは監視の文化を生み出すことを目的としているのではないと述べた。また、主として「生産性」ツールではないとしている。
「もちろん生産性に関する参考情報は提供したい」とPatel氏は語る。「しかし、より重要なのは、ユーザーがウェルビーイングの点でどういう状態にあるのか、またどのように人間関係を育んでいるのか、知ってもらうことだ」(同氏)
今夏より一部のWebexユーザーは、個人のウェルビーイングを高め、より質の良いつながり、さらなるインクルーシブな職場体験を実現するインサイトにアクセスできるようになる。今後1年で、世界のユーザーがこの機能を利用できるようになる見通しだ。
Ciscoはプライバシーを優先して設計したことを強調している一方、チームと企業向けにもこの機能を提供する。「Team Insights」は、チーム全体のつながりのパターン、コラボレーションの習慣、ワークライフインテグレーションについて、各チームメンバーが知ることができるインサイトを提供する。「Organizational Insights」は、組織のコラボレーションの傾向とパターンを俯瞰的に把握できるようにする。
Patel氏は、これが従業員の監視ツールにならないよう、対策を講じていると説明した。例えば、データは匿名化されて集計されるので、上司は営業チームとマーケティングチームが十分なコミュニケーションを取っているかどうかを知ることができる一方、特定の営業担当者がどのくらいの頻度で、他の人とコミュニケーションをとっているのかを知ることはできない。また場合によっては、情報収集の対象となることに、個人がオプトインする必要があり、オプトアウトすることもできる。
Patel氏は、マネージャーがリモートで働く従業員を監視するような機能を構築することは難しくないが、同社のコアバリューに即していないため、構築しないことにしていると話した。
Patel氏によると、ポストコロナ時代の仕事環境は、社内勤務とリモートワークが恒久的に融合する見通しのため、この新機能はWebexをそうした環境に合わせる同社の取り組みの一環だという。リモートワークへの突然の移行は、従業員に大きな負担を強いたが、次のシフトはさらに厳しいものになるかもしれないという。
Patel氏は、「仕事の世界がハイブリッドモデルへと移行する中で、世界は再び変わることを余儀なくされるだろう。企業は生産性のために最適化を追求するだけでなく、生活にある程度のバランスがあるよう、責任を持って取り組まねばならない」と述べた。
いずれワークライフバランスをサポートすることが健全なビジネスの判断となると同氏は話す。「長期的に、持続的な生産性は、従業員のウェルビーイングの副産物となる」(Patel氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。