システムエンジニアリングサービス

常駐エンジニアのスキル向上と各社取り組み--SES分科会

橋田博明 (ONE WEDGE)

2021-04-12 07:00

 2021年3月に開催した第84回の「システムエンジニアリングサービス(SES)分科会」は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、オンラインで開催しました。2部構成のうち、第1部では「新規顧客の開拓方法」について議論しました。ビジネスマッチングアプリなどを個人で活用している方がいるなど、なかなかいい情報共有の場になったのではないでしょうか。

 第2部では「常駐エンジニアのスキル向上施策に関する各社の取り組み」をテーマとし、未経験者の育成過程における工夫や、現場のエンジニアから管理者や上位層にステップアップさせるための取り組みなど、各社の状況を意見交換しました。

 SES事業を展開する中で、こうした課題を感じている企業も多く、議題として多くの要望が挙がっていたこともあり、非常に有意義なディスカッションとなりました。

常駐エンジニアのスキル向上施策に関する各社の取り組み

 客先常駐が多いSES業務において、各エンジニアのスキル向上は各社の取り組みが影響しているといっても過言ではありません。

 エンジニアにスキル向上の機会を与えられないと、離職につながってしまう可能性もあります。そのため、各社がどのような取り組みをしているかは非常に気になりますし、参考にしたいはずです。ディスカッションの内容は次の通りになります。

・技術系の勉強会やオンラインサロンなどを活用

 エンジニアのスキルアップに欠かせないのが、企業側で独自対応している勉強会などだと感じます。最近はオンラインでも開催できるため、以前のようにクライアント企業の業務が終わってから自社に集まる必要もなくなり、よりスムーズに実施できるようになりました。

 勉強会については、自社で用意するだけでなく、外部に委託しているという意見もありました。外部サービスの場合は、技術系スキルだけでなく、リーダー育成などの講座も活用しているそうです。

・エンジニアのスキル目標を把握

 個別のミーティングで把握する流れが基本になります。まずは、エンジニア自身がどのような技術を身に付けたいか、どのようなスキルを習得すればもっと業務に貢献できるかなどを聞き出します。その上で、どのような学習をすればいいのか、いつまでに習得すればいいのかを落とし込んでいき、スキルアップの進行状況を第三者的に見るということになります。

 同時に課題の発掘などもつながるので、個別のヒアリングはとても重要になります。

・クライアント企業とスキル向上のための相談

 エンジニアのスキル向上について、クライアント企業にも一緒に検討してもらっているという声もありました。

 客先での実際の業務内容から、ステップアップに必要なことを課題として取り組ませ、クライアント企業にも協力してもらっているそうです。自社だけだと、なかなか具体的な課題を出すことが難しい部分もあるため、顧客と良好な関係を築いていることが前提となりますが、非常に良い工夫だと思います。

・新人教育の担当

 経験を積んだエンジニアのスキル向上のため、通常の単独業務でなく、新人を一緒に従事させて体制化することで、現場担当者からサブリーダーへとステップアップを図ります。また、新人に仕事を教えることが自分の振り返りにもなるでしょう。

・資格手当や書籍代/外部セミナー受講料などの支給

 エンジニアのスキル向上施策として、既に導入している企業は多いと思いますが、少し変わった取り組みでは、資格を取得すると給与が上がる仕組みを取り入れている企業もありました。

 給与につながるのであれば、資格取得を目指すエンジニアも増えていきそうですね。

・業務(スキル)チャレンジができるような業務を選択

 これまでは金融系システムに携わっていたエンジニアの担当業務をウェブ系システムに変更させたり、開発工程だけでなく上流工程も担当できるようにクライアント企業に打診したりするなど、業務上でチャレンジできる選択肢を与えます。

 もちろん、クライアント企業にお願いするだけでなく、自社でフォロー体制を示して、エンジニアのスキル向上に取り組んでいるケースもありました。

 その他にも、客先の業務だけでは、チャレンジする機会が少なくなってしまう傾向にあるため、自社で請け負った開発案件にアサインして経験を積ませている企業などもありました。また、月次で自社の全体会議を開き、そこでクライアント企業の業務内容を発表させるなど、できるだけエンジニアの視野を拡げさせるように工夫している事例もありました。

 SES業界では、“エンジニアファースト”という声を昨今よく耳にしますが、エンジニアがどのようなスキルを習得したいか、何をもって幸せなのかを追求し、叶えるように努めているという企業もあります。

 ベテランエンジニアが相手となると、さらなる工夫が必要になるでしょう。基本的には完全に自走してもらっていく中で、個別面談やクライアント企業の協力を得ながら課題を発掘し、事実に即して修正していくほかないような気がしています。

 参加メンバーは、エンジニアのスキル向上をいま以上に深く考えていかないといけないと、改めて考えることにつながったのではないでしょうか。

オンライン開催となったシステムエンジニアリングサービス(SES)分科会の参加者
オンライン開催となったシステムエンジニアリングサービス(SES)分科会の参加者

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