クラウドで事業用建物の建設や活用を自動試算--山下PMCが「BEAMap」を開始

大河原克行

2021-04-12 11:15

 建設コンサルティングの山下PMCは、建物の自動規模算出とそれに応じた不動産事業収支を連携させ、事業用建物の建築に関わる各種検証を自動で行うことができるクラウドサービス「BEAMap」を開発し、4月12日にサービスを開始する。

 BEAMapは、土地活用での事業用建物の建設を検討する際に必要な「計画地での建築法規制を満たす建物規模の算出(ボリューム検討)」「周辺の賃料相場把握」「事業収支計画作成」など、専門知識が必要な複雑な検証をクラウド上において、一定の精度で自動算出できる。

 山下PMCは、日本初のPM(プロジェクトマネジメント)、CM(コンストラクションマネジメント)の専業会社として、建設プロジェクトのマネジメント業務を行っている。これまでに横浜市役所の新庁舎や横浜スタジアムの増築、森ビルデジタルアートミュージアム、丸の内二重橋ビルの東京商工会議所専有部、順天堂大学新研究棟などのプロジェクトに参画。現在進行中のプロジェクトの総事業費は3兆円以上に達する。4月1日には施設管理向けクラウドプラットフォーム「b-platform」の提供も開始しており、今回の「BEAMap」はクラウドサービスの第2弾となる。

山下PMC 取締役専務執行役員の木下雅幸氏
山下PMC 取締役専務執行役員の木下雅幸氏

 取締役専務執行役員の木下雅幸氏は、「建築計画や不動産投資を検討する際にベースとなる建物ボリュームや、事業収支計画が即時にでき上がる。これにより、プロフェッショナルは、本来能力を発揮すべき仕事に注力できる。7割の完成度の資料を完成させる際に、90%の作業を自動化できる。建築業界と不動産業界の革新的イノベーションを提供する第1歩」と位置付ける。

 土地を有効活用したり事業用建物の建設を検討したりする際には、建築に関する専門知識に加え、不動産や金融などさまざまな専門知識が必要になる。だが、分野ごとに専門家が分散しているため初期の検討に多くの労力を要し、タイムリーな投資判断を逸するケースが散見されているという。さらに建築、不動産、金融分野における専門人材が不足しているといった課題も出ている。

山下PMC 代表取締役社長の川原秀仁氏
山下PMC 代表取締役社長の川原秀仁氏

 山下PMC 代表取締役社長の川原秀仁氏は、「BEAMapを3年かけて開発した。土地の購入や建設の意思決定に関わるハードルを劇的に下げることができる。建物規模の算出と周辺の賃料相場把握、事業収支計画を瞬時に作成するサービスを安価に提供する。プロフェッショナルでも煩わしいと思っている作業を容易に片付けることができ、建築プロジェクトへの門戸を確実に下げられる」と述べる。

 具体的には、建築ピボットの技術を採用することで、日影規制や斜線制限といった複雑な建築法規制についてもクラウド上でも検証が可能になり、山下PMCの持つノウハウを活用して、貸し室面積の自動算出機能や専門家のニーズに応える編集機能を搭載した。建物のボリューム検討を建築士以外でも簡単に算出できる。

 また、距離での範囲指定や用途や竣工時期といったさまざまな条件設定をもとに、絞り込みを行い、賃料相場把握が可能になる。さらに、専門家でなくても簡単な条件入力のみで事業収支計画を作成できる。標準的な数値を用いた検討が可能なほか、空室率や賃料の増減を独自に設定することで、専門家のニーズにも応える精度の高い検討も可能になる。

「BEAMap」での条件入力画面
「BEAMap」での条件入力画面

 BEAMapは、端末へのインストールなどが不要で、操作はガイダンスに沿って入力すればいい。目的となる計画対象敷地を地図で検索し、敷地形状をトレースすると、概略敷地面積を把握できる。境界線条件や道路幅員などを入力した後に建築条件の前提となる用途地域の情報を国土交通省のデータベースから取り込むと、建築基準法などの条件を自動的に反映する。専門家が利用する際に必要となる諸条件入力機能も搭載している。条件入力などが終わると、3次元の立ち上げボタンから建設可能ボリュームを表示し、360度回転させながら視覚的に建築物を確認できる。続けて、建設可能ボリュームをもとに面積表を自動作成する。ここでは、必要駐車台数の根拠となる駐車場条例や各階の階高を入力すればいい。

「BEAMap」でのアウトプットイメージ
「BEAMap」でのアウトプットイメージ

 さらに、事業収支計画を作成するために、賃料相場を検索。検索範囲を距離で絞り込んだり、用途や竣工年で絞り込んだりできる。表示された賃料リストから類似建物を選択して平均賃料を計算し、事業収支計画の条件を入力すれば良いという。

 簡単な操作で利用できるため建築士は、BEAMapを用いることで、建築法規制の検証による建物規模検討のみのサービス提供に加えて、賃料相場把握から事業収支計画作成までをワンストップサービスとして提供できるようになる。同様に、不動産や金融分野の企業も、付加価値の高いサービスを提供できるようになるという。建築、不動産、金融分野の各企業が投資や事業用建物を検討するクライアントに対するサービス価値を高めることができ、建築業界と不動産業界の相互理解が可能になり、情報ギャップの課題を解決したり生産性向上を実現したりできるとする。

 対象ユーザーは、設計者や不動産会社のほか、信託銀行や銀行、不動産投資運用会社などの金融系企業、ビルオーナーやランドオーナー、建設不動産に興味を持つ一般ユーザーなども含める。さまざまな規模の土地、建物に対応できるという。今後3年以内に、1000~2000アカウントの利用を想定し、年間で1億5000万~3億円の売り上げを目指す。

 木下氏は、「BEAMapにより『プロフェッショナルには作業からの解放を』『設計業界と不動産業界にWIN-WINを』『適切な投資で、街ににぎわいを』『すべての人に建設の楽しみを』という4つのビジョンを達成したい。建築基準法や消防法、各種条例といった守るべき法規を順守するなど神経を擦り減らす確認作業に忙殺されているプロフェッショナルの作業がなくなる一方で、不動産業界が重視する収益性や投資の概念が分からないという設計・建設業界の課題と、設計者の工夫や努力が伝わりにくいという不動産業界のギャップを無くす。また、街の空白地を有効利用したいと考えている人や、建築の専門家以外の人たちが、建築に関与できるきっかけにもなる」と話す。

 同社の社員数は約200人で、そのうち120人以上が一級建築士の資格を取得している。先頃はANAエアポートサービスから12人の出向社員を受け入れたことでも注目を集めた。今回の発表会見でも出向社員がBEAMapのデモストレーションを担当。BEAMapを使用してANAから出向してわずか2週間であり、建築に関する知識がない人でも建築士の資格を持つ人と同じ水準で資料をつくることができたという。

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