ソフトウェアの利用形態において、間もなくSaaS(Software as a Service)型パブリッククラウドサービスが主流になる――。2つの市場調査による予測からそんな近い将来の姿が見えてきた。まさしくクラウド時代の到来を象徴する動きといえそうだ。
2024年度にSaaSがパッケージを上回るERP市場
まず、1つ目の市場調査は、アイ・ティ・アール(ITR)が4月8日に発表した「国内のERP(統合基幹業務システム)の提供形態別とパッケージ製品の運用形態別での市場規模推移および予測」である。
図1がその推移を表したグラフで、「2020年度のERP市場はコロナ禍の影響で前年度比5.8%増とやや低い伸びを予測」していることと、「ERP市場の2019年度から2024年度までの年平均成長率は9.5%を予測」していることをトピックとして挙げている。
図1:2024年度までのERP市場規模推移および予測:提供形態別(パッケージ部分は運用形態別)
だが、筆者がこのグラフを見て注目したのは、2023年度にSaaSとパッケージ(IaaS+オンプレミス)の市場規模が逆転していることだ。
ただ、ERPはユーザー企業やシステムインテグレーター、ソフトウェア開発会社などが個別に開発したケースもあるので、市場全体の中でSaaSが過半数を占めるのはもう少し先になるかもしれないが、いずれにしても近い将来には「国内のERP市場でSaaSが主流になる」ことが見えてきた形だ。
こうした「逆転」の予測は、ERPだけでなくソフトウェア市場全体でも当てはまるのか。そんな疑問を抱いて調べてみたところ、もう1つの市場調査を見つけた。冨士キメラ総研が2020年11月に発表した「ソフトウェアビジネス新市場2020年版」の中の「ソフトウェア(パッケージおよびSaaS)の国内市場調査」である。
この調査は、カテゴリー別に業務システム16品目、デジタルマーケティング8品目、情報分析3品目、コラボレーション10品目、ミドルウェア8品目、データベース2品目、運用/管理ツール2品目の合計49品目を対象に、パッケージとSaaSの2つの提供形態別に市場を捉えることで、ソフトウェアビジネスの現状を明らかにし、今後について予測したものである。
図2がその推移を表した図で、市場全体におけるSaaSの比率は2021年度に過半数を超え、2024年度には56%に達すると予測されている。すなわち、逆転のタイミングは上記のERPだけより2年早まるとの見立てである。
図2:ソフトウェア49品目の国内市場におけるパッケージおよびSaaSの規模の推移(出典:冨士キメラ総研)