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「ひとり情シス」の本当のところ

第28回:大企業の情シスがひとり情シスに興味を持つ理由

清水博

2021-04-20 07:00

大企業の情シスがひとり情シスに興味

 今回の「ひとり情シス実態調査」と「中堅企業IT投資動向調査」では、ITベンダーで経験を積んでからひとり情シスに転職する方の割合が可視化されました。これは、一つのひとり情シスへの潮流になっていくものと思えます。また、さらに多くのひとり情シス転職予備軍が存在することが想定されます。

 1000人以上の大企業の情報システム部を対象に、2020年のコロナ禍でのキャリアパスやモチベーションに関する調査を行ったところ、予想していたよりもモチベーションが非常に高いことが判明しました。「将来、ひとり情シスをやってみたいですか?」という設問の結果からは、大企業の情シスの27%がひとり情シスに興味があることが分かりました。興味本位で答えている方も多少はいるかもしれませんが、関心を持っている方も多いと思われます。

 中堅中小企業ではデジタル化の人材が常に不足しているので、大企業の情報システム部に勤める経験豊富なスタッフの転職は朗報であると思います。

アンマッチ防止には細心の注意が必要

 大企業の情報システム部から転職したひとり情シスの方から、転職に当たっては用意周到に準備したという話を聞きました。10年もの期間をかけて、経営者を含め多くの方たちとの対話の中でひとり情シスに必要な能力を確認して、中堅規模の企業で求められるスキルを想定して自身のスキルアップをしたそうです。将来はエンドユーザー企業の中でIT全体を把握し、経営に貢献できるような情シスになるという強い情熱を持ち続けて準備してきたということです。

 情シス部門に限ったことではありませんが、転職市場がホットになるほど、転職のアンマッチが生じやすくなります。セールス部門やマーケティング部門でもアンマッチが生じる可能性はあります。しかし、これらの職種では面接を進める中で前職の会社環境やプロセスなどをある程度理解できるので、得意とする仕事の領域などを想定できます。しかしながら、情シスは会社によって環境やプロセスが全く異なる場合もあります。同じ情シスとはいっても身に付けてきたスキルセットが転職先では全く必要とされず、求められることに全く対応できない場合もあります。

 一般的に経営層や総務部門が面接官となりますが、そういった方たちは情シスの苦労や見えない仕事などをあまり理解していないことが多いです。本来は採用側がきちんとした職務記述書を作成し、それをもとにした面接をすべきですが、そこまでの準備はなかなかできないでしょう。入社後のアンマッチをなくすためにも、転職を希望する方から細々と確認するのが望ましいです。

 また、情シスに限った話ではありませんが、大企業から中堅中小企業に転職することの難しさも報道されています。大企業に長い間いると、知らず知らずのうちにその会社でのプロセスや企業カルチャーに染まってしまうものです。企業規模に関係なく、会社独特の根回しや予算の申請などの「お作法」の難しさがあり、それぞれの会社の文化に対応する必要があります。

 企業が求める職務要件に対応するスキルだけではなく、会社のプロセスやカルチャーを確認して準備していくことが肝要です。大企業の情シスの場合は、多少不得意な部分があっても自身のスキルに見合った業務を担当することもできるでしょうが、中堅中小企業ではそうはいきません。

清水博
清水博(しみず・ひろし)
ひとり情シス・ワーキンググループ 座長
早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のディレクターを歴任、ビジネスPC事業本部長。2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。2020年独立。『ひとり情シス』(東洋経済新報社)の著書のほか、ひとり情シス、デジタルトランスフォーメーション関連記事の連載多数。

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