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「全人類上司化計画」を唱えるウイングアーク1stの田中社長の思い

田中克己

2021-04-28 07:00

 「今秋にも全人類上司化計画を実現する」――。帳票ソフトウェアなどを展開するウイングアーク1stの田中潤社長兼CEO(最高経営責任者)は、全ての人が上司になり、(ソフトウェアや機械などの)ロボットを部下として使いこなす仕組みづくりに取り組んでいる。2021年3月に東証一部への上場を果たした同社は、帳票ソフトウェアやビジネスインテリジェンス(BI)ツールの開発、販売に加えて、クラウドサービスの提供やデータを扱う企業へと姿を変えている。その中で打ち出した「全人類上司化計画」の狙いを探ってみた。

ウイングアーク1stの田中潤社長兼CEO
ウイングアーク1stの田中潤社長兼CEO

 2004年設立の同社は、2021年2月期に売り上げ約180億円、従業員約700人の規模に成長した。ソフトウェアのライセンス販売からデータを活用した新たな価値を創り出すソリューション提供へとビジネスモデルを変えてきたのは、「ユーザーはツールが欲しいわけではなく、データをうまく活用し、業務の効率化や売り上げを伸ばしたい」(田中社長)からだ。

 ユーザーニーズの変化ということでもある。自社の都合に合わせたオーダーメイドの情報システム構築を各社がSI(システム開発)企業に個別に依頼していたら、無駄な時間とコストがかかるだけではなく、ビジネススピードに追いつけなくなる。その一方で、生産性とスピードの向上が強く求められてきた。それに応えるのが全人類上司化計画なのだろう。

 もちろん、業務プロセスの効率化などを図るサービスモデルやソリューションも提供している。1つは帳票ソフトと文書管理を生かしたビジネス、もう1つはBIツールなどを活用したデータ集計/分析と可視化を行うビジネス。それらをベースにするソリューションもそろえる。

 例えば、総菜コーナーの徹底的な管理を要求されているスーパーに、食品の安全性を証明できるようHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿ったデータを集計、記録し、衛生管理を可視化するソリューションを提供する。営業活動を効率化して売り上げ増を図るソリューションや、工場の製造ラインを最適化して収益率を伸ばすソリューションなどもある。マネージャーのデータ活用法や現場の生産性などを可視化するための簡単にすぐに使えるテンプレートも用意する。

 全人類上司化計画はそうした効率化を推し進め、人とロボットの役割分担を定義し、業務プロセスの自動化を図るもの。そのためには、人は時間に対する対価の時間給から価値に対する対価の成果給という働き方にする。労働時間は増やさないということ。一方のロボットは作業の自動化を担う。例えば、メールで受け取った資料を開いて、データを取り出し、他のところに入力する。つまり、全ての人が意思を決定する上司になり、部下のロボットを教育し、定型業務や手作業を任せる世界を創り上げるということ。

 ユーザー企業に、こうした業務プロセスをデジタル化するコンサルティングをしたり、ソリューションづくりをしたりする業種・業務に詳しい実務経験者を、既に約100人も配置する。全従業員の7人の1人になる。「業務を知っている人がこうしたら変わるという仕組みを作り、コンサルティングする」(田中社長)

 システムとシステムがシームレスにつながっていないと、人がそれを補うことなる。つまり、メールに届いた請求書を取り出し、そのデータを支払いのシステムに入力すること。ミスも起こるかもしれない。それを自動化するための道具と仕組みが全人類上司化計画で、クラウドサービスでも提供する。より多くのユーザーに利用してほしいからだという。

 44歳になった田中社長は、全人類上司化計画を実現するサービスの企画、開発を自ら指揮し、今秋にも最初のバージョンを出す。「完璧なものではないが、どんどん進化させていく」(田中社長)

 その一方で、全人類上司化計画がSI企業のビジネスに大きな影響を及ぼす可能性が高い。SI企業がこれまで蓄積した業種・業務ノウハウをサービスモデル化したものといえるからで、受託開発からサービスモデルへの転換など、新しいビジネスモデルの創出に迫られるだろう。

 新型コロナウイルス感染症は日本経済にも大きな打撃を与えている。IMF(国際通貨基金)が4月に発表した2021年の世界経済成長率(実質GDP)は2020年のマイナス3.3%からプラス6.0%へ回復すると予測する。日本経済も2020年のマイナス4.8%から2021年に3.3%とプラスに転じる。だが、世界経済に比べた回復力は弱い。その策の1つが人口減少をカバーするIT活用による生産性向上だ。「コロナはその追い風になる」と田中社長は、ITが世の中を変える力を持つと確信し、全人類上司化計画の実現を急ぐ。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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