調査

オフィス縮小の流れで国内WANサービスの成長率鈍化か--IDC Japan

大場みのり (編集部)

2021-04-26 17:39

 IDC Japanは4月26日、国内WAN(Wide Area Network)サービスの市場予測を発表した。これによると、2025年の国内法人向けWANサービス市場(レガシー専用線を除く)は6140億円、2020~2025年の年間平均成長率は0.6%だという。

 国内法人向けWANサービス市場の今後5年間について同社は、成長率はわずかにプラスで推移しながら、その程度は徐々に低下していくと見ている。市場の成長要因としては、企業のクラウドシフトに伴うパブリッククラウドへの接続需要の拡大、DX(デジタル変革)の加速による回線数やトラフィックの増加が挙げられる。

 マイナスの要因としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束してもリモートワークを継続すると決めた企業が2021年頃から、不動産価格の高い都市部のオフィススペースの集約や統廃合を行うことが考えられる。これは、高価な帯域確保型サービスの利用減少を中心に、同市場の成長率を押し下げる要因になるとIDC Japanは予測している。

 COVID-19の流行は、2020年の国内法人向けWANサービス市場にも影響を及ぼした。飲食業や小売業、観光業などの産業において、業績悪化に伴う廃業や一部拠点の撤退/縮小などが起こり、WANサービス市場にマイナスの影響を与えた。一方で、「巣ごもり」によるインターネットトラフィックの増加に対応するため、ISP(インターネットサービスプロバイダー)やコンテンツ事業者が抱えるイーサネット専用線の大口顧客が増速を求めるなどして、市場を下支えした。

 その結果、2020年の同市場に関しては、2019年の成長率を下回ったもののプラス成長を維持し、全体としてはCOVID-19の影響は軽微なものにとどまった。また、リモートワークの増加に伴う閉域網サービスのインターネットゲートウェイの増速や、リモートアクセスの契約ID数の追加など、応急処置的なリモートワーク対応の案件が2020年前半に急増する現象も見られた。

 IDC Japan コミュニケーションズのリサーチマネージャーの小野陽子氏は、「WANサービスの顧客は、WANにセキュリティや柔軟性など多くの付加価値を求めるようになっている。また、COVID-19によるリモートワークの定着によって社外と社内を同等に扱うゼロトラストモデルへの移行が加速する。WANサービス事業者は、顧客のWANの見直しやセキュリティ強化へのニーズに寄り添ったソリューション提案、カスタマイズ/インテグレーションを行うために、人的支援体制を強化する必要がある」と述べる。

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