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急拡大・多様化するオブジェクトストレージの活用事例

Brian Burns (クラウディアン)

2021-05-06 07:00

 この2年間で、オブジェクトストレージのユースケースは劇的に拡大・多様化しています。データアーカイブをはるかに超える広範な領域で導入されるようになりました。長年にわたり、オブジェクトストレージは、主にアーカイブテープの置き換えとして導入されてきましたが、ここ数年は、さまざまな業界で革新的なユースケースが創出されています。ここでは、そうした説得力のある新しいユースケースを紹介し、最新の市場動向と業界ニーズにどのように対応するかを説明します。

 オブジェクトストレージは、大規模な組織内外のさまざまなグループに、共有のデータストレージサービスやアクセス環境を提供するために利用されることが多くなっています(インターナルサービスプロバイダーとも呼ばれます)。

 いつでも、どこでも、誰でも、あらゆるサイズのデータに安全にアクセス可能なだけでなく、非効率的なデータサイロが排除され、汎用サーバーの使用と効率的なデータ保護によって、NAS(ネットワーク接続ストレージ)やSAN(ストレージエリアネットワーク)などの従来型ストレージと比べ、コストを大幅に削減できます。

 大阪大学が運用するスーパーコンピューター「SQUIDプロジェクト」は、その典型例といえます。無数の研究者がパブリッククラウドを使用するのと同じように、大学内外のデータやデータサービスに柔軟にアクセスできるようになります。 オブジェクトストレージは、高性能コンピューティング(HPC)と高性能データ分析(HPDA)に焦点を当てた大阪サイバーメディアセンターに必要不可欠なソリューションを提供しています。

 オブジェクトストレージが急速に成長するもう1つの要因は、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方に対応する点です。 ほぼ全てのパブリッククラウドが、高拡張性と低コストを実現するオブジェクトストレージを主要なストレージ基盤として採用しています。例えば、楽天コミュニケーションズの「楽天クラウド」やNTTコミュニケーションズの「Enterprise Cloud」、石川コンピュータ・センター(ICC) などの国内パブリッククラウドは、業界標準となっている「Amazon S3」との高い互換性を持つクラウドストレージサービスを企業顧客向けに提供しています。

 さらに、一部のオブジェクトストレージ基盤は「自己管理型」であるため、企業が独自の「プライベートクラウド」を構築する際にも管理者による作業は不要になります。これにより、パブリッククラウドの使いやすさとオンプレミスインフラストラクチャーの低コスト/高性能の両立が可能になりました。

 セキュリティ、パフォーマンス、コストの理由からオンプレミスのデータセンターに大規模なデータセットを持つ国内の政府組織の多くは、オブジェクトストレージを採用しています。政府機関のさまざまな部門が、地元産業を支援するために人工知能(AI)と機械学習(ML)を採用した革新的なシステムを開発してきました。

 例えば、農業分野における活用事例では、全国に張り巡らされたセンサーやカメラ、ドローンなどから収集された気象情報、農作物の成長、水の供給状況、植物の遺伝子情報、病害虫や野生動物に関する膨大なデータがストリーミングされ、オブジェクトストレージ上の全国規模のデータリポジトリーに保存されます。

 これらのデータは、AI/MLエンジンによって利用され、作物の生育状況やゲノム構成、環境要因との相関関係を分析し、害虫や動物被害に対する耐性を高めることにも役立ちます。また、地域の農家には、作物の収穫量を増やすための重要な情報や意見が提供され、需要量と生産量を一致させるための市場情報なども提供されます。

 ランサムウェア特有の脅威では、エンドポイントセキュリティやファイアウォールなどの従来の保護方法だけでは役に立たないことが明らかになり、企業のサイバーセキュリティに対する見方が変わりました。 IDCによると、ランサムウェアなどによる日本企業のサイバー攻撃被害は2019~2020年の間に400%以上増加しており(注1)、攻撃からデータを保護することに成功した企業はわずか5%でした(注2)。

 また、ある調査によると、企業がこれらのランサムウェア攻撃から迅速に回復できるようにする最善の方法は、データの不変性、つまりオブジェクトストレージの「オブジェクトロック」と呼ばれる仕組みが最適であると考えられています。この方法では、バックアップデータは社内外を問わずいかなる状況下でも、誰も変更/削除できないように保存されるため、ランサムウェアの攻撃を受けた場合、変更されていないクリーンなバックアップコピーから迅速に復旧することができます。

 これは企業のデータ保護を実現する実証済みのソリューションですが、そればかりではありません。多くの保険会社が、このソリューションを導入する企業にサイバー保険の割引を提供しているため、コスト削減にもつながります。この中には、ランサムウェアの攻撃対象の第1位である病院などの医療機関も含まれています。

 最後の事例は予想外かもしれませんが、ハードディスクではなくフラッシュメモリーを搭載したオブジェクトストレージが、金融機関、オンラインメディア、遺伝学研究などのミッションクリティカルなシステム向けに採用されています。その用途は、高速取引用の二次ストレージ、トランザクション処理、ゲノム配列決定、DNA研究にまで及びます。他には、DevOps環境向けの高性能なS3ターゲットや、Kubernetesワークフロー用のストレージサービスなどが挙げられます。

 オブジェクトストレージは、もはやアーカイブなどのアプリケーションに限定されなくなりました。パフォーマンスの向上に伴い、柔軟に拡張できる機能と低コストであることから、急速に利用が拡大するようなアプリケーションのストレージ基盤として選択されるようになっています。急速に増加するデータ容量に対応するため、より低コストで拡張性の高いストレージを必要とするアプリケーションが増えているため、この傾向は今後も続くと考えられます。

Brian Burns
クラウディアン 代表取締役
日本を含めアジア太平洋地域でセールス、マーケティング、およびパートナー事業提携の取り組み全般をリード。以前日本のゼネラルマネージャーであったHashicorpで日本担当のゼネラルマネージャーを務めた後、Cloudianに入社。前々職のHortonworksでは北アジア地域副社長として日本市場に貢献した。
Cybersource(VISA)やMicrosoftなどの米国テクノロジー企業の戦略的市場参入とアジアでの拡大に焦点を当てて過ごした。カリフォルニア大学バークレー校で工学のMBAとBSを取得し、慶應義塾大学にも在籍。在日15年以上で、現在東京に拠点を置く。

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