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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国が試す新たな集合住宅の管理法「信酬制」とは

山谷剛史

2021-04-30 07:00

 中国には「小区」と呼ばれる集合住宅の区画がある。そこの住民は管理会社に管理費を支払っているわけだが、「やり方が気に食わない」「コストをかけすぎている」といった理由で契約を打ち切ることがある。ニュース記事や交流サイト(SNS)などで取り上げられることも増え、かくいう筆者の拠点とする団地でも、住民による管理会社の契約解除を経験した。

 筆者のケースだと、契約解除&コスト削減の必要派と不要派で住民が二分し、必要派が勝手に管理会社の人員削減を決定。その後、見回りをする警備員が目に見えて減ったり、掃除の頻度が下がったりといった影響が出て、不要派の間で不満の声が上がっていた。

 そんな中、「信酬制」と呼ばれる集合住宅の新たな管理方法が、中国南部・海南島(海南省)海口市美蘭区の「瓊苑広場小区」で2021年1月から試行されている。「信酬制」では、住民が管理会社を決めるだけでなく、小区の財務情報もチェックできるようになっている。管理会社の人件費や修繕費などの支出や、管理費や広告料、駐車場代といった収入を確認できる。

 瓊苑広場小区は、2021年の予算として23項目に及ぶ業務管理で計86万5000元を計上した。その予算の進行状況は、中国の大手銀行の一つである招商銀行のアプリを通じて可視化される。管理室の前にはアプリ用のQRコードが掲示され、住民の利用を促進している。

 招商銀行のアプリをインストールし、その小区の設定を入力することで、同行の海口支店が開発した専用ページが表示される仕組みになっている。

 結果として、管理費を自主的に納入する住民が417人から470人(全517戸)に増え、苦情件数は2019年、2020年と比べて大きく減った。中国ではプラス面ばかりが報じられているが、財務状況を可視化することで苦情の数が減り、支払いが良くなるのは素直にメリットとしてとらえるべきだろう。

 瓊苑広場小区での反応を受け、海口市美蘭区では、さらに9カ所の小区で信酬制を開始した。ただ、現状の管理状況に不満のある小区は導入に前向きである一方で、現状に不満のない小区では導入に消極的とも言われる。

 ちなみに先立って、中国政府(住建部)は国内全土の小区をデジタル化(DX化)する計画を発表している(住宅に関するスマート化計画のドラフト版を発表している)。例えば、住民と車両をネットワークカメラでチェックする、共用部や各部屋にもさまざまなセンサーを取り付ける。小区に出入りする車両のナンバーは記録され、外部からの訪問者はスマートフォンで登録される。気象警報や防災速報は小区専用のアプリで住民に自動で通知され、電気や水道・ガスの利用に異常を検知したら管理会社が確認する。さらに、小区内の各種データを蓄積/活用することで、さまざまな動きを人工知能(AI)で予測できるようになるだろう。

 また、同計画の中では、小区内の各種データを可視化するコントロールセンターが用意されるという。現実的に考えれば、小区の管理室にさまざまな情報機器が設置されることになりそうだ。中国政府が目指すDX化した小区には、美蘭区が構築した財務管理の仕組みが組み込まれる可能性もある。美蘭区の信酬制モデルが成功して海南省全土、さらに中国全土に広がるならば、スマートフォンアプリで各種メッセージを受け取ったり、水道・光熱費を支払ったりするのに加え、小区の財政状況をチェックすることが当たり前になるかもしれない。

 日本でも、マンション管理会社に限らず、学校や町内会や趣味のグループなど、会費を集めて活動に役立てる組織は数多くある。中国モデルをどこまでまねるかは別として、お金の流れを可視化することで人的コストやトラブルが減らせるならば、導入するのも悪くないのではないか。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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