本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏と、アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の山野修氏の発言を紹介する。
「3つのポイントでひも解くDXの神髄をお話ししよう」
(日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏)
日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏
日本IBMは先頃、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)促進に向けた自社イベント「The DX Forum」をオンラインで開催した。山口氏の冒頭の発言はそのオープニングスピーチで、企業がDXを成功に導く3つのポイントについて説いたものである。
早速、3つのポイントを紹介しよう。
- デジタル企業としてのビジョンと戦略を明確に示す
- デジタルテクノロジーの基盤を整備する
- 上記の2つを実行するための組織変革力を持つ
山口氏によると、この3つのポイントは、IBMが先頃日本を含む世界中の5000社を超える顧客企業を対象に、DXの取り組みを調査した結果から浮かび上がってきたものだという。図1は、その3つのポイントについてそれぞれ15項目の45問からなる調査を実施し、取り組むべき課題を明らかにして、同社のDXソリューションに反映させている内容の一部を示したものである。
図1:企業がDXを成功に導く3つのポイント(出典:日本IBM)
山口氏はこの調査結果を踏まえ、「日本のお客さまの間でもグローバル企業と同じように、DXの取り組みが経営変革そのものであるとの認識が深まりつつあり、地に足を着けたDXが動き始めている」との見方を示した。
その一方で、日本企業の課題についても具体例を挙げながら、次のように説明した。
「日本企業はカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上、すなわち、きめ細かい顧客体験をフロントエンドで実現しようということについては世界でも先進的だが、一方でそのノウハウを全社で活用するためのワークフローやデータ活用におけるバックエンドの仕組みに目が向いていないケースが目に付く」
「RPA(ロボティックプロセスオートメーション)の活用においても、日本企業は業務の自動化に向けて熱心に取り組んでいるが、その対象となる業務が一部にとどまっており、全社で組織横断の形で業務プロセスを見直すことには貢献していないケースが見受けられる」
「AI(人工知能)の活用においても、日本企業はFAQ(よくある質問)の質的向上には熱心だが、経営判断を行うための将来予測に適用されているケースはまだまだ少ない」
その上で山口氏は日本企業に対し、「全社でDXを推進するためのITプラットフォームを構築し、その基盤上でさまざまな課題に取り組まれることをお勧めしたい」とし、IBMでは図2のようなソリューションを用意していることを説明。さらに、「当社はオープンなソリューションと幅広いエコシステムによる共創によって、日本のDXをさらに盛り上げていきたい」と強調した。
図2:IBMのDX向けソリューションの全体像(出典:日本IBM)
山口氏のスピーチは実質15分余りだったが、非常に濃い内容だったというのが筆者の印象である。