共和薬品、独立契機にERP刷新--受注から出荷、請求までの時間を半分に

TechRepublic Japan Staff

2021-05-12 06:45

 医療用医薬品などを製造、販売する共和薬品工業(大阪市北区、従業員数640人)は統合基幹業務システム(ERP)をパッケージの「SAP ECC 6.0」からクラウドベースの「SAP S/4HANA」に刷新して稼働。移行を支援した日立ソリューションズが5月11日に発表した。

 1954年設立の共和薬品工業は、2007年にインドの後発医薬品メーカーLupinグループとして事業を展開。Lupinグループ共通のECC 6.0をベースにERPを利用してきたが、日本独自の商習慣を踏まえた組織体制に合わせたコード体系の変更や新しい帳票の追加といった、他国の利用者に影響がある機能の変更や拡張への対応は難しかったと説明する。

 インドで稼働しているシステムを日本からネットワーク経由で利用していたため、大量データ転送時のシステムの処理能力不足やレスポンス速度の遅さ、ネットワークの遅延も深刻な問題となっていた。

 Lupinから未公開企業投資(プライベートエクイティファンド=PEファンド)のユニゾン・キャピタルに株式が譲渡され、2019年12月に再び独立することが決まった。M&A対象の事業や企業の移行期間中におけるサービス提供に関する契約(Transition Service Agreement:TSA)の期限である2020年12月までに新システムに移行する必要があった。

 こうした背景から共和薬品工業は、130件以上のSAP製アプリケーションの導入実績をベースに医薬品業界の業務知識に加え、稼働前のリハーサルなどの実現性の高い計画を提案してきた日立ソリューションズを評価。S/4HANAを導入した。

 要件定義で課題の優先順位を明確にして、カスタマイズで開発する機能や移行データを最小限にすることで9カ月で構築したと説明。S/4HANAは2020年11月2日から稼働させている。

 インメモリデータベース「SAP HANA」をベースとするS/4HANAによるERPを構築したことで、大量データの高速処理や分析が可能となり、現在の2倍の受注量になってもシステムの増強は不要と解説。自社専用のシステムであることから、機能変更や他のシステムの連携など拡張性や柔軟性が向上したとしている。

 データ処理能力やレスポンス速度といった性能が3~5倍に高まったことで従来の数十倍のスピードで帳票を作成できるなど、受注から出荷、請求までの時間は従来の半分になったとしている。

 Amazon Web Servicesにインフラを構築、可用性は99.99%を実現していると強調。災害復旧(DR)環境も構築している。日立ソリューションズが提供する、導入後の運用支援(Application Management Outsourcing:AMO)サービスを利用してシステム管理者の運用負荷も軽減できているという。

 共和薬品工業は今後、S/4HANAのデータベースに蓄積されているデータを経営判断のための指標として利用することを予定している。ロボティックプロセスオートメーション(RPA)を活用して経営データをダッシュボードやポータルサイトに可視化して、関係者で共有できるようにして経営判断のスピード向上を図っていくとしている。

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