富士通とAWS、モビリティーDXのグローバル展開で協業

大河原克行

2021-05-13 12:03

 富士通とAmazon Web Services(AWS)は5月12日、モビリティー業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するグローバル展開で協業することに合意したと発表、13日に取り組みを説明した。

 協業では、富士通がモビリティー業界で培ってきたデジタルツインやセキュリティソリューションと、AWSのクラウドサービスを組み合わせ、モビリティー業界における新たなサービスやビジネスの創出を支援するフルマネージドモビリティーソリューションを共同開発する。これをAWS Marketplaceで10月から日本向けに提供を開始し、その後は欧州や北米などに順次展開する予定だ。

富士通とAWSの協業内容
富士通とAWSの協業内容

 富士通は、モビリティー業界向けデジタルツイン製品として、ストリームデータ処理基盤の「Digital Twin Utilizer」、車載カメラ映像解析プラットフォームの「Digital Twin Analyzer」、モビリティーデータの活用を支援する統合基盤「Digital Twin Collector」を製品化している。今回の協業では、これらのソリューションやプラットフォームを活用することで、車両のセキュリティ管理を行う管理センター「V-SOC(Vehicle-Security Operation Center)」を核としたフルマネージドモビリティーソリューションを開発、提供する。

 またAWSは、車両をクラウドに接続して、セキュアなモビリティー機能やアプリケーション基盤を構成したテンプレート「AWS Connected Mobility Solution」を提供、これを活用したコネクテッドカーのデータ活用や、新たなサービスなどのユースケースを富士通と共同で創出し、グローバル展開するという。

 さらに富士通は、AWSのプロフェッショナルサービスを活用して、モビリティー業界の企業に対し、基幹業務やモビリティーサービスのシステム開発や運用、既存システムのモダナイゼーションを支援する。プロフェッショナルサービスを活用したシステム開発は6月に日本で開始し、その後は欧米に展開する。

 この他にも富士通は、モビリティー業界を担当するシステムエンジニアを対象として、AWS認定資格保有者を新規で750人育成、AWSのクラウドを活用したシステム開発体制を強化する。AWSにクラウドにおけるシステム開発のプロフェッショナルを増強することで、モビリティー業界のDXを実現するシステムを提供する考えだ。

 13日の記者会見で富士通 Mobility事業本部 FMアクセラレーター事業部長の神俊一氏は、「AWSはモビリティー分野のビジネスで強力なパートナーになる。今回の協業により、コネクテッドカーの世界で安心、安全なクラウド環境、セキュアにデータ管理できる基盤を提供し、世界のモビリティー業界にオファリングできる体制が整う。自動車メーカーや保険、物流などを対象に、モビリティー業界におけるDXを加速し、ビジネスを拡大させる」と述べた。

 また、UpStreamを含めた3社による協業のほか、スタートアップ企業を含めた新ソリューションや将来のモビリティーの方向性を考えたいとし、「自動運転のシミュレーション領域では富士通のシミュレーション技術とデジタルツイン技術を活用しバーチャル環境での実験を通じて安全性を高めるソリューションの開発や、各種データで最適、安全なルートを提案するソリューションの提供などもAWSとの協業でグローバルに展開していく考えも示した。

 一方、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 第一ストラテジックパートナー本部長兼第二ストラテジックパートナー本部長の相田哲也氏は、「富士通は自動車分野で長年の実績があり重要なパートナー。グローバルのモビリティー業界のユーザーに対して、AWS Connected Mobility Solutionなどのマネージドサービスを活用してもらい、DXを支援する。モビリティー業界のさまざまな企業にAWSサービスを選択する幅が広がる」とした。

富士通 Mobility事業本部 FMアクセラレーター事業部長の神俊一氏(左)とアマゾン ウェブ サービス ジャパン 第一ストラテジックパートナー本部長 兼 第二ストラテジックパートナー本部長の相田哲也氏
富士通 Mobility事業本部 FMアクセラレーター事業部長の神俊一氏(左)とアマゾン ウェブ サービス ジャパン 第一ストラテジックパートナー本部長 兼 第二ストラテジックパートナー本部長の相田哲也氏

 AWSは、国内でオートモーティブ市場を担当する営業や事業開発、エンジニアリングの専門人員の強化を図っている。この市場では、トヨタの「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」でAWSが採用されたり、ソニーのVISION-Sプロジェクトでも活用されたりしている。また海外では、Fordとコネクテッドカーに関するアプリケーションサービスを提供。今後は国内およびグローバルでのパートナーとの協業強化や、ソリューションオファリングの強化を進める中で、今回の富士通との協業は大きな意味を持つ。

 自動車業界では、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を中心にした技術革新が進んでおり、車両から提供されるデータを活用したモビリティーサービスによる競争力強化が注目されている。基幹システムの効率化や、CASEによる創出が期待される新たなサービスやビジネスを実現するために、さまざまな形でDXが推進され、今回の両社の協業は、モビリティービジネスの進化や業界のDX進展などに影響を与えることになる。

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