日本ヒューレット・パッカード(HPE)は5月13日、x86サーバー「HPE ProLiantファミリー」「HPE Cray EX supercomputerファミリー」に第3世代「AMD EPYC 7003シリーズプロセッサー」(コード名:Milan)/第3世代「インテルXeonスケーラブル・プロセッサー」(コード名:Ice Lake)を搭載する18モデルを同日付で発売すると発表した(一部モデルは2021年夏の発売予定)。2017年から展開している「Gen10サーバー」の上位モデルに位置付けられ、「Gen10 Plus」と呼ばれる。
同社が重点領域と位置付ける「5G/IoT」「Digital Workplace」「Data Management and AI」「Hybrid Cloud」の4領域に今回発表の新製品をマッピングしたリスト。なお、同社のIAサーバー製品では、型番の数字の末尾が“5”はAMDプロセッサー搭載機、“0”はIntelプロセッサー搭載機を意味している
Gen10 Plusサーバー群の主な強化ポイント。新世代のプロセッサーを搭載することはもちろん、I/Oの強化やストレージの強化、NICの規格変更などが行われている
執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏は、同社がグローバルで推進しているas-a-Service Company化という方針を踏まえ、新製品のハードウェア面に着目するのではなく、新製品が顧客に提供する価値は何か、という観点で説明した。
同氏は、新製品を含む同社のハードウェア製品を「顧客のDXを支えるHPEのコンピュート基盤」だと位置付けた上で、その提供価値として「ワークロード最適化」「360度セキュリティ」「インテリジェントオートメーション」「as-a-serviceエクスペリエンス」の4点を挙げた。
「ワークロード最適化」では、同社が長年に渡って培ってきた経験に基づいてワークロードに応じた最適なサーバー構成をアドバイスするというもの。IAサーバーはオプションパーツや周辺機器、各種ソフトウェアの組み合わせなどで膨大なバリケーションを構成することが可能な反面、用途に適した最適な構成を決定するには豊富な知識やノウハウが必要となる。同社では、顧客自身または販売パートナーが使用可能なコンフィギュレーションツールに同社の知見を組み込み、最適な構成を実現する支援を行うという。
ワークロード最適化。具体的なワークロード/アプリケーションで計測した場合に最適化を行うことで大幅な性能向上が見込めるという
「360度セキュリティ」では、同社が取り組む「HPE Silicon Root of Trust」などのハードウェアレベルでのセキュリティ対策をライフサイクル全般に渡って提供するという。「インテリジェントオートメーション」では、「“管理いらず”の追求」を掲げ、システムの自律化やプロアクティブな障害対応などをさらに強化していく。
セキュリティの強化では、サーバーメーカーとしてハードウェアレベルでの信頼性向上/セキュリティ確保に継続的に注力していく
インフラの自律化/プロアクティブな対応も継続的な取り組みとなっている
「as-a-serviceエクスペリエンス」では、“保守サービスの次世代の姿”だという「HPE Pointnext Tech Care」が紹介された。HPE Pointnext Tech Careでは、2017年に買収したNimble Storageの「InfoSight」に加えてユーザーとの応答などにも人工知能(AI)を広範に活用し、「運用保守における新たなエクスペリエンス」を提供するという。
as-a-Serviceエクスペリエンスの提供に向けた取り組みの中核となるHPE GreenLakeの概要
続いて、取締役 常務執行役員 Pointnext事業統括(兼)ストラテジック・アライアンス統括本部長の小川光由氏が、HPE Pointnext Tech Careについて概要を説明した。同氏は、HPEの運用保守サービスであるPointnext事業のこれまでの流れについて、2010年頃までの「リアクティブ」な対応から、2011~2020年の「プロアクティブ」な対応に進化し、さらに2021年から「エクスペリエンス」の提供に至るとした。
今回の取り組みを「新しい体験をテクノロジーを使って提供」するものだとした上で、ベースとなるテクノロジーとして新たに提供される「DCE」(Digital Customer Experience)というコミュニケーションツールと、AIを活用した分析基盤である「HPE InfoSight」の2つがあり、その基盤上に「Digital and Data Driven(デジタルとデータの活用)」「Personalized and Predictive(パーソナライズと予測)」「Innovative and Intelligenct(イノベーションとインテリジェンス)」といった“体験”が実現されるとした。具体的な内容としては、動画情報の広範な活用やAIチャットによる対話型の情報収集などが行われるという。
同社の運用保守サービスのこれまでの歴史。2017年のNimble買収によってInfoSightを獲得。当初はNimble Storage製品のみが対象だったが、その後サーバーやネットワーク機器期を含むHPEの全製品を対象とするよう拡張されており、今回のHPE Pointnext Tech Careではこれをベースに高度な運用保守サービスが実現される
HPE Pointnext Tech Careで実現される新たなエクスペリエンスの例
最後に、コアプラットフォーム事業統括 プロダクトサポート本部 本部長の早野忠篤氏が、HPE Pointnext Tech Careの詳細を説明した。HPE Pointnext Tech Careは、これまでインフラストラクチャーに対するサポートとして提供されていた「HPE Proactive Care」と「HPE Foundation Care」の2つを統合する形になる。サポートレベルに応じてFoundation Careでは3レベル、Proactive Careでは2レベルの計5レベルのメニューが用意されていたが、統合に伴って「Tech Care Basic」「Tech Care Basic 4H」「Tech Care Essential」の3レベルにシンプル化される。
従来のサポートでは、ユーザーがサポートセンターに連絡し、オペレーターとの対話で基本的な情報などを確認した上でエンジニアが診断などを行う流れになっていたが、Tech CareではAIチャットツール「Virtucal Agent」の活用によって基本的な診断までを迅速に行うことができ、効率良く最短時間で対応できるようになるという。なお、Virtual Agentは現状では英語によるテキストチャットとなっているが、日本語化については現在準備中とのこと。音声対話のサポートは現時点では計画はないという。
保守サポートメニューの簡略化。従来は安価な基本的な保守サポートと位置付けられるFoundation Careと、予測対応を含む上位版のProactive Careに分かれていたが、Tech Careに一本化される。なお、価格はFoundation Careに近い水準だという
Tech Careで提供されるVirtual Agentを活用した保守対応のイメージ。初期段階でのオペレーターによる情報確認のフェーズが大幅に効率化されることが期待される
Virtual Agentの利用イメージ。基本的な情報確認や故障箇所の特定、原因究明に必要な手順などが案内されるほか、ユーザーによるオンサイト対応を支援するための動画情報の提供などもあるという