富士通と武田薬品工業(武田薬品)は国立がん研究センターと共同で、卵巣がん患者が経験するペイシェントジャーニー(疾患の認識から診断、治療、その後の生活までの道のり)の分析/可視化に関して共同研究契約を締結した。富士通と武田薬品が5月17日に発表した。
同研究では、臨床の課題を抽出し、卵巣がんにおける個別化治療と治療結果を向上させることを目的としている。国立がん研究センター東病院が保有する電子カルテシステムから抽出した日々の診療や個人の健康管理などから得られる「リアルワールドデータ」を用いて、卵巣がん患者のペイシェントジャーニーに関する情報を分析/可視化する。同研究は、国立がん研究センター東病院と先端医療開発センターにおいて、2022年4月30日まで実施する。
対象のデータは、2013年5月~2020年10月の間に国立がん研究センター東病院の電子カルテシステムに蓄積された卵巣がん患者約700人の診療データや医事会計システム内の診療報酬データ。リアルワールドデータを匿名化し、ITで分析/可視化することで、卵巣がん患者を取り巻く実臨床上の課題を抽出する。
同研究では、富士通が現在開発中の医療データを安全に活用するためのプラットフォームなど、ITを用いた診療データの分析支援、武田薬品がペイシェントジャーニーの分析に用いるデータの選定と分析計画の立案を担当する。国立がん研究センターは、ペイシェントジャーニーの分析に必要な匿名化された診療データと医学的知見を提供する。
富士通は今後、同研究の成果を基に、異なる疾患においても同様の取り組みを重ね、リアルワールドデータの安全な活用環境を整えていく。武田薬品は、今後進展が予想される個別化医療において満たされていないニーズを捉え、バリューベースヘルスケア(医療行為において患者の価値基準を重視する考え方)の実現に向けたソリューション開発にもつなげていく。