富士通の新サービス「ハンズフリーの多言語音声翻訳」が目指すものとは

松岡功

2021-05-20 07:00

 本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、富士通が提供する「ハンズフリーの多言語音声翻訳サービス」を取り上げる。

音声翻訳時の端末操作が困難な医療などの現場に対応

 富士通は先頃、ハンズフリーで日本語と11言語間のAI音声翻訳を可能にする新サービス「FUJITSU多言語音声翻訳ソリューション TRISY(トライジー) powered by Zinrai」を開発し、外国人とのコミュニケーションが不可欠ながらも音声翻訳時の端末操作が困難な医療や観光分野などの現場向けに提供開始すると発表した。

 TRISYは同社が独自開発したハンズフリー技術を搭載することで、タブレット端末に接続された指向性マイクで話者の音声や位置を認識し、適切な言語に自動で切り替えて音声翻訳するとともに、翻訳開始や終了などの操作も自動で行えるようになる。

 これにより、さまざまな医療機器や書類を手に持ちながら患者と頻繁に会話する医療従事者が、負荷やストレスなく、外国人患者の受け付け対応や症状の説明などを行うことができるようになる。

 外国人とのコミュニケーションの機会が多い観光施設の窓口対応などにおいても、PCの操作や荷物の携行をしながらスムーズに観光名所の案内や宿泊施設の予約対応などが可能となる。

 また、医療現場のような、周囲の雑音が定常的に発生する状況でも高精度に音声を認識するため、雑音を抑制する独自の技術を搭載し、空調機器や検査機器などの定常雑音を判別した上で雑音を抑制。これにより、大病院の検査室など、60dB(普通の会話レベル)ほどの騒音がある環境下でも、高精度な音声認識を実現したという。(写真1

写真1:TRISYの利用イメージ(出典:富士通)
写真1:TRISYの利用イメージ(出典:富士通)

 さらに、日本語と11言語間の音声認識および機械翻訳において実用レベルの高精度な自動翻訳に対応。翻訳エンジンは同社が主幹事として参画し、医療分野向けの音声翻訳技術を開発、実証してきた、総務省の情報通信技術に関する研究開発「グローバルコミュニケーション計画の推進」の成果と、情報通信研究機構(NICT)の音声翻訳技術の研究成果を活用した、みらい翻訳(渋谷区)の音声翻訳APIサービスを採用している。

 この翻訳エンジンを活用し、2019年10月から12月まで、沖縄県内の医療機関6施設と共同で、機械翻訳による医療現場での実用性に関する実証実験を行い、英語だけでなく中国語に関しても、医療現場での有用性を検証できたとしている。加えて、この翻訳エンジンは総務省の研究開発において、医療現場以外でも観光施設の窓口などのさまざまな外国人対応の場面で実証が行われ、実用性が確認されている。

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