クラウドサービス市場をリードするAmazon Web Services(AWS)は、オンプレミスと共存する「ハイブリッドクラウド」についてどう考え、どのように対処しようとしているのか。それを確認する機会があったので、ここで取り上げたい。
「クラウドがオンプレミスを含めたあらゆる場所へ拡張」
「これまではハイブリッドクラウドと言うと、『オンプレミスの拡張としてのクラウド』と捉えられてきたイメージがあるが、これからは『クラウドがオンプレミスを含めたあらゆる場所へ拡張していく』という形態に変わる」
AWSジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏は、同社が5月11〜12日に開催した自社イベント「AWS Summit Online 2021」の基調講演で「ハイブリッドクラウド」を話題に上げ、こう切り出した(関連記事)。
「ハイブリッドクラウド」について語るAWSジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏
クラウドサービスを提供するAWSはかねて、ハイブリッドクラウドについては「完全なクラウド移行への『通過点』」との見解を示してきた。この点については、長崎氏もこれまでさまざまな機会でぶれることなく説明を繰り返しており、3月に行われたAWSジャパンの事業戦略会見でも筆者が確認の質問をしたところ、同氏は「通過点という考え方に全く変わりはない」とキッパリ答えた。
ただ、今回のイベントの基調講演では、ハイブリッドクラウドについて少し時間を割き、冒頭の発言に続いて次のように説明した。
「ここに来てあらゆるワークロードがクラウド上で動くようになってきた。すると、その重力に引っ張られるように、今後はクラウド体験をあらゆる場所に拡張していく形態になるのではないかと考えている。そこにはクラウドかオンプレミスかという区別はもうない。既存のオンプレミスのシステムもクラウド上でそのまま使えるようになる」
AWSによるハイブリッドクラウドの考え方
こう話した長崎氏は、クラウドをオンプレミスといかにシームレスに活用できるかについて、「低レイテンシー(低遅延)」「ローカルデータ処理」「データのホスト場所」「VMwareクラウド移行」「データセンター拡張」「エンタープライズクラウド移行」といった6つのワークロードについて、AWSが提供するサービスを交えながら次のように説明した。
クラウドをオンプレミスとシームレスに活用できるワークロードの例