松岡功の「今週の明言」

NEC森田新社長が経営方針会見で見せた「攻めの姿勢」とは

松岡功

2021-05-21 12:44

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏と、マカフィー 代表取締役社長の田中辰夫氏の発言を紹介する。

「2025中期経営計画では成長事業とベース事業の両輪で収益向上を実現していく」
(NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏)

NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏
NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏

 NECは先頃、2020年度(2021年3月期)の決算と今後の経営方針について発表した。4月1日に同社社長に就任した森田氏の冒頭の発言は、そのオンライン会見で、2021年度(2022年3月期)から2025年度(2026年3月期)までの5年間の中期経営計画のポイントについて述べたものである。

 森田氏による中期経営計画の説明で、筆者が注目したのは、同社が推進する事業を「成長事業」と「ベース事業」に区別したことだ。これまで長年にわたって同社の決算や経営方針に関する会見にはほぼ出席してきたが、こうした区別を行って事業内容を説明したのは、筆者の記憶では今回が初めてだ。

 どのように区別したかというと、成長事業はデジタルガバメント(DG)、デジタルファイナンス(DF)、グローバル5G(次世代通信規格)、コアDX(デジタルトランスフォーメーション)、そして次の柱となる事業のことで、ベース事業はそれら以外の事業を指す。

 2025中期経営計画では、2025年度に全社の売上収益3兆5000億円(2020年度は2兆9940億円)、営業利益3000億円(同1782億円)を目標としているが、これらを成長事業とベース事業に分けて見ると図1のようになる。すなわち、成長事業が文字通り今後の成長を担っているが、それもベース事業があってこそという考え方から冒頭の発言になったようだ。

図1:2025中期経営計画における成長事業とベース事業の予想(出典:NEC)
図1:2025中期経営計画における成長事業とベース事業の予想(出典:NEC)

 成長事業の中でコアDXという言葉が気になった読者もおられるだろう。森田氏によると、「国内IT事業のトランスフォーメーション」の中にコアDXとベース事業である既存のIT事業があり、今後は図2に示すように「国内IT事業をこれまでの個別最適から全体最適へと、コアDXをテコにベース事業の変革を図るとともに、国内IT事業の営業利益率を8%から13%に改善していく」とのことだ。コアDXの内容については、図2に記されている3つがポイントとなる。

図2:国内IT事業のトランスフォーメーションの内容(出典:NEC)
図2:国内IT事業のトランスフォーメーションの内容(出典:NEC)

 筆者がなぜ、こうした事業の区別に注目したかというと、富士通が半年前から主力のテクノロジーソリューション事業を「For Growth」と「For Stability」に分け、成長事業を前面に押し出した形で説明するようになったからだ。今回のNECの説明も基本的な方向は同じだという印象を持った。富士通の説明については関連記事で解説したので参照していただきたい。

 その解説記事でも述べたが、筆者はかねがね、IT分野をはじめとした日本企業は欧米企業に比べて決算や経営方針の会見での成長事業や注力事業の説明がおとなしいと感じ、記事でも幾度か「成長事業をもっと前面に」と訴えてきた。

 それが、ここにきて日本のIT企業を代表する富士通とNECが目に見える形で「攻めの姿勢」を前面に打ち出すようになってきた。筆者の訴えが届いたかどうかは分からないが、今回の森田氏の説明に、勝手ながら小さな達成感を得た次第である。

 ただ、会見の質疑応答で「成長事業とベース事業を分けた意図」を聞こうとしたが、時間切れで質問の順番が回って来なかった。次の機会に確かめてみたい。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  2. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  3. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  4. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  5. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]