新潮流Device as a Serviceの世界

Device as a Serviceを使う4つのステップ、経費化とユーザー単位管理とは

松尾太輔 (横河レンタ・リース)

2021-05-26 06:00

 私は、日本マイクロソフトの協力のもと、3月に「デバイス・アズ・ア・サービス~新しいPCの運用とモノのサブスクを考える~」(カナリアコミュニケーションズ刊)を上梓しました。それを記念(?)して、今回から2回にわたり、日本マイクロソフトが考えるDevice as a Serviceの定義について解説していきたいと思います。

 日本マイクロソフトは、Device as a Serviceを4つのステップで定義(下図参照)しています。


  • STEP 1:CAPEX(初期費)からOPEX(運営費)へ
  • STEP 2:ユーザー中心の管理モデル
  • STEP 3:クラウドベースの管理基盤
  • STEP 4:セルフサービス化

 まず、STEP 1の「CAPEXからOPEXへ」について解説します。「初期費から運営費へ」とは、どういうことでしょうか。

 「PCの費用を月額にしただけ」「Microsoft 365のようなソリューションやサポートサービスもつけてパッケージにした」だけで、「それがDevice as a Serviceです」と言われても、何がいいのかよく分からないというのが、正直なところだと思います。本連載で繰り返し申し上げていますが、これだけで「Device as a Service」ということではありません。

 ただ、月額化されたPCを長期資産として保有し利用するところを、短期利用を可能にすることで、コストを柔軟にするメリットはあります。これは私の所属する横河レンタ・リースなどのレンタル会社が提供しているレンタルPCで既に実現されていることです。日本マイクロソフトは、この状態をDevice as a ServiceのSTEP 1と位置付けています。つまり、「レンタルPC=Device as a Serviceの全てとは言えないが、その最初の一歩」であると――。

 CAPEXは「Capital Expenditure」の略で、日本語で正しくは「資本支出」と訳されます。資産として所有し、償却して当年のコストとして計上するという従来の設備利用の仕方です。対して、OPEXは「Operating Expense」の略で、意味合いとしては「経費支出」とした方がしっくりくると思います。つまり、資産として償却するのではなく、経費で処理するということです。

 資産で持ってしまえば、不要になったからといって償却費の支払いを止められるものではありません。簿価が残っていれば、廃棄するにしても損失を計上する必要があり、柔軟とは言えません。「月々の経費で利用でき、不要になれば止めることができる」ということが、短期のニーズにも対応できるということです。レンタルPCは、国際会計基準(IFRS)において単純に経費とはならず、「レンタルPC=OPEX」というわけではありません。日本マイクロソフトは、短期のニーズに柔軟に対応できるコスト負担方式がDevice as a Serviceの第一歩だと定義しており、その代表例がレンタルPCということになります。

 いま日本で提供されているDevice as a Serviceの多くは、このレンタルPCをベースにしています。それにMicrosoft 365のようなクラウドサービスやソリューション、サポートサービスをパッケージしただけのものが多いですが、これはDevice as a Serviceであってもまだ第一歩であり、利用者がDevice as a Serviceの効用を全て享受する上では、まだ要素が足りていません。日本マイクロソフトはSTEP 1という表現をしており、その不足分がSTEP 2で定義されている「ユーザー中心の管理モデル」と言う要素です。

 なお、読者の皆さんに気をつけていただきたいのは、単に短期のニーズに応えられるということと、よく聞かれる「解約無料」といううたい文句が同じではではないということです。以前の記事で触れた通り、資産として持つよりも管理の負荷が軽くなると思いますが、ベンダーも商売である以上、常に解約無料というわけにはいきません。モノ(PC)が動く以上、モノ自体のコストに加えて、配送費や保管費などがかかります。(物体ではない)コンテンツの配信とは違い、出荷量に合わせて増える変動費が大きく、限界利益が小さいのが、モノのサブスクの特徴です。そのため、「幾分かの解約金は必要になる」ということです。

 また前述のように、単にレンタルPCを採用しただけでは、CAPEXからOPEXになりません。国際会計基準(IFRS)では、契約によって長期利用が前提となっている単純なレンタルPCは、資産計上する必要があります(もちろん会社ごとの事情で異なります)。そういう意味でも、やはり月額化されたPCであるレンタルPCは、Device as a Serviceの第一歩でしかなく、本当に利用企業に資するas a Serviceを達成するには、他にも要素が必要なのです。

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