Veeam Softwareは、ワールドワイドで実施する年次カンファレンス「VeeamON 2021」をオンラインで開催した。7回目となるイベントは前年に続きオンラインで開催され、今後のデータ保護の方向性や2021年後半に提供予定の新機能などが紹介された。
Veeam Software CEOのWilliam(Bill) Largent氏
基調講演で最高経営責任者(CEO)のWilliam(Bill) Largent氏は2020年度を振り返り、「売上高が10億ドルの大台を超えたことは、われわれがより大きな企業へと成長する機会を得たと言えるだろう。売上高、顧客数、新規顧客数が大幅に増加し、今も増え続けている」と業績、顧客数ともに順調な伸張ぶりをアピールした。
さらにVeeamの強みとして、「シンプル、フレキシブル、信頼性を差別化要素として重視している。われわれが昔から使っているキャッチフレーズは『It just works』。競合他社との差別化要素として非常に重要なものだからこそ、外部の評価機関やアナリスト、顧客から評価を受けている」と強調した。
Veeam Software CTO兼製品戦略部門シニアバイスプレジデントのDanny Allan氏
2021年度の新たな取り組みや今後の方向性は、最高技術責任者(CTO)兼製品戦略部門シニアバイスプレジデントのDanny Allan氏が説明した。
Allan氏も、「Veeamはストレージやインフラといったハードウェアを製造しない最大のストレージ企業であり、2020年は通年で242ペタバイト(のデータ)をクラウドオブジェクトストレージプロバイダーの上位3社に移行した。2021年はその勢いがさらに加速し、第1四半期だけで100ペタバイト以上のデータを移行した。最近では『Veeam Backup & Replication』のアクティブインストール数が100万を突破した」と述べている。
同氏は、世界がコロナ禍により企業では在宅勤務を余儀なくされるなどの一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進したことを挙げ、「全く新しい時代が訪れ、われわれはDXを体験した。業務活動もリモート化されたが、その際に欠かせないデータに目を向けて見てほしい。ある意味で、状況は変わっていない。リモートサービスやリモートオペレーションを提供するためのデータは、この20年間ずっと変わっていないと思う」と語り、データに関しては以前から変化が起こっていないと指摘した。
では、コロナ禍を受けてデータの変化がどうあるべきか――Allan氏は、今後のデータ保護の方向性に言及し、「われわれや顧客にとっての第一の課題は、そのデータを保護すること。データの保護はデータをバックアップし、複製し、長期保存をすること。このサイクルは、新しいインフラを導入する度に行われる。例えば、メインフレームのバックアップを行っていたが、その後に物理システムをバックアップするようになり、仮想インフラを保護することで、(Veeam Softwareの)名を知られるようになった」と話す。
そして、「今後は同じバックアップとレプリケーションがコンテナーやサーバーリストにも適用されるようになるだろう。つまり、このサイクルを何度も繰り返す。今後はこれらのプロセスをビジネス組織の中で自動化し始めるべきだ」と語り、データ保護が自動化される必要性を提起した。
加えて、「データの移動は、ほとんど進化がなく、現在でも多くの企業が圧縮ソフトを使ってデータを移動している。われわれのソリューションは、ファイル内にファイルシステムを構築し、いつでもデータを取り戻せる。この仕様の副次的な効果として、ポータビリティーがある。顧客の中には、ある場所でワークロードを保護し、そのデータを別の場所に移動してリカバリーをするというケースが見受けられる。つまり、クラウドからスタートしてオンプレミスに移動したり、その逆を行ったりしている。今後は気候変動、医療問題などコミュニティー全体でデータの再利用が必要になるだろう。そのためには、データをポータブルにし、コピーを行ったデータを活用するという方向が望ましい」との見解を示した。
2021年後半に提供を予定する新機能は、まずRed Hat Virtualization(RHV)のバックアップのサポートを挙げた。Veeamは、既に3つのハイパーバイザーに対応しているが、顧客からの要望に応え、RHVを第4のハイパーバイザーとしてサポートする。「Red Hat to Veeam Backup & Replication」 によるハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)向けの強力なデータ保護機能と、Veeamのコントロールプレーンでの標準化による管理の複雑性の軽減、インテリジェントなVeeamのストレージリポジトリーによるストレージ使用率の向上などを実現するとしている。
Red Hatバーチャライゼーションを新たにサポートする
また、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud向けのクラウドネイティブ対応の拡張も実現する。Veeamのプラットフォームによって、あらゆる環境のワークロードのバックアップ、リカバリー、移行を行うクラウドモビリティーを提供し、クラウドワークロードのネイティブな保護により、最大50倍のコスト削減を実現するという。AWS、Microsoft Azure、Google Cloudのネイティブバックアップに対応した最もコストのかからない長期保存とアーカイブとなるよう、3社のアーカイブオブジェクトストレージもサポートする。
さらに、新しいセルフサービスポータルとAzure ArchiveおよびAWS S3 Glacierとの統合を図る「Veeam Backup for Microsoft Office 365 v6」も提供する。新しいセルフサービスポータルは、IT 部門の負担を軽減してIT部門がほかの業務に集中できるようになり、大企業やサービス提供事業者のROI(投資利益率)を向上させる。また、リカバリー作業をユーザーの手に委ねることができる。このポータルを利用することで、ユーザーの組織はチーム間で作業を分担してリストアの処理方法を改善し、自前のポータルを構築する時間と労力を節約して、重要データへの迅速なアクセスを実現できるとした。
Veeam Backup for Microsoft Office 365 v6
コンテナー関連では、Kubernetes環境向けKasten K10とVeeamのリポジトリーを統合する。Kubernetesのデータ保護サービスを拡張することで、将来に広がるコンテナー化された製品開発に備え、今日のDevOpsと今後の普及が見込まれるPlatformOpsをサポートする。Kubernetesワークロードのミッションクリティカルなバックアップを保存するための、統合された一元的な場所をユーザーに提供するという。
コンテナー環境のバックアップ性も向上を図る
一元的なデータ管理のために、Kasten K10ではVeeamのストレージリポジトリー(ディスク、ソリッドステート、オブジェクトストレージ、クラウド、テープなど)への書き込みが可能となる。Kubernetesバックアップの保存オプションをクラウド、オンプレミス、ランサムウェア対策を施した書き換え不可な場所に拡張でき、完全なポリシー管理のために、Kastenのワークロードを自動バックアップのデータライフサイクル管理に含められるとしている。