「デジタルの民主化」――つまり、業務部門が自らデジタル化に挑むことを体現している企業は数多くいる。今回は、ウェブデータベースとワークフロー機能を備えた大企業向けクラウド「SmartDB(スマートデービー)」のユーザーの中から、世界トップクラスのアスリートを支えるブランド、ヨネックス(文京区、連結従業員数1815人)の活用事例を紹介する。
1.大組織ならではの複雑なワークフローにあふれる紙業務
日本を代表するスポーツブランドとして国内だけでなく、北米、欧州、中国、台湾、インドなどを拠点にグローバル展開し、海外売上高比率が50%を超えるヨネックス。組織が大きくなるにつれて、複雑なワークフローやあふれる紙業務の運用に限界を迎えていた。
代表取締役社長の林田草樹氏が「変革への挑戦」をスローガンに掲げたこともあり、全社を挙げて業務のデジタル化を推進することが決まった。
情報システム部によるシステムの採用基準は「業務部門が自律的にデジタル化できるもの」であった。「私たち情報システム部だけが動いてボトルネックになるよりも、業務を変えたいと望む部門が自ら動けるようになった方がずっと良いと考えたのです。その視点で見たとき、SmartDBが最も優れていると感じ採用を決断しました」と情報システム部門の高柳卓士氏は話す。
2.社長室によるデジタル化--ベンダーサポートを有効活用
まずデジタル化に取り組んだのは社長室だ。
社長室では決裁直前に「その申請書類が適切な承認プロセスを辿ってきたか」の確認業務がある。どのスポーツの種目か、費用が発生するものなのか、契約書があるのか、人事に関わるものか、といった細かい条件によって承認のルートが変わるため、その種類が非常に多かったという。以前のワークフローシステムでは細かい対応ができず、すべて手作業だったと説明する。
この複雑なワークフローのデジタル化は、社長室のメンバーが主体となって進められた。稟議書、報告書のワークフローは最初に取り組むにはかなり複雑な仕組みであったため、ドリーム・アーツの開発支援サポートを利用した。ワークフローやウェブデータベースの基礎知識、業務フローの整理、基本的な使い方などサポートを受けながら自律的に取り組み、自分たちの手で複雑なワークフローのデジタル化に成功した。
自律的に社長室が開発を進める裏で、情報システム部 高柳氏は、この開発支援サポートの内容を、今後の自分たちの運用の参考にしようと考えていた。
「私たちも横で聞いていて、『こういう教え方をしていけば、他部門にも展開していけるのか』 と勉強になりました。業務部門の自律的なデジタル化実現のためにも、いずれはドリーム・アーツの代わりに情報システム部が、SmartDBの社内サポートを担おうと考えていたからです」
ここでのポイントは複雑な業務のデジタル化(複数部門にまたがり、他システムとの連携が必要な業務)の際は、ベンダーの開発支援サポートを使い、そのノウハウを吸収することだ。開発支援にはただ単にそのツールの使い方を教えるだけではなく、基本的なITの知識、業務の整理の仕方などのノウハウを得ることもできる。そしてそのノウハウは、その後全社に展開する際にそのまま使えるものが多い。ヨネックスは開発支援サポートを上手に利用した好例である。