Microsoftのクラウドサービスはどのように進化しているのか。同社が開発者向けに最新技術を披露した年次イベント「Microsoft Build」で、筆者は1枚の図に注目した。どんな図で、なぜ注目したのか。一言もの申したい。
Nadella CEOが「Microsoft Build 2021」で示した1枚の図とは
「今回のBuildでは100以上の新サービスや重要な技術のアップデートを発表する」
米国時間の5月25〜27日にオンラインで開催された「Microsoft Build 2021」の初日の基調講演で、同社CEO(最高経営責任者)のSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏はこう切り出した。

Microsoft Build 2021の基調講演でスピーチするMicrosoft CEOのSatya Nadella氏
同イベントでは「次世代Windows」の話題をはじめ、今や同社の主力ビジネスとなったクラウドサービスにおいて最新の取り組みが次々と紹介され、多くの開発者の熱狂ぶりが各種メディアを通じて伝わってきた(関連記事)。
そんな中、筆者が最も注目したのは、Nadella氏が基調講演で「Microsoft Cloud」について語り始めた際、最初に示した1枚の図だ。図1がそれで、ご覧の通り、Microsoft Cloudの全体像を表したものである。同氏はこの図を示したものの、中身には触れず、今回のイベントで発表する内容の話に入っていった。というのは、開発者には見せるだけで分かる図だからである。

図1:最新のMicrosoft Cloudの全体像(出典:Microsoft)
この図は、同社内で「ビルディング・ブロック」と呼ばれており、要は主要なクラウドサービスをIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)のレイヤーに分けて見せたものである。SaaSの上には「Industry clouds」、すなわち「業種別クラウド」が記されている。
なぜ、この図に注目したのか。実は、この図には前段がある。それが図2だ。この図は、日本マイクロソフト 代表取締役社長の吉田仁志氏が2020年10月7日に開いた経営方針についてのオンライン会見で示したものである。

図2:2020年10月公表時のMicrosoft Cloudの全体像(出典:日本マイクロソフト)
吉田氏は図2を示しながら、「当社はデジタル変革(DX)についていち早く取り組み、実現させてきた。何がどう変わったか。従来のライセンス販売からクラウドのサブスクリプションへとビジネスモデルを大きく変えた。この経験と学びを生かし、当社だからこそ提供できる価値をお届けして、お客さまのDXを支援したい」と語った。すなわち、図2はMicrosoftのビジネスモデル転換を象徴したものでもあるというわけだ。