図1にある通り、目標管理と評価は一体のものです。そこから等級や報酬を決め、能力開発が派生するわけですが、これは表現を変えると、図2のようになります。

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評価による「公平感のある処遇」の決定、「社員の活躍と成長」の推進、そして「組織文化の形成」。そのために目標管理が必要、ということですね。
さて、目標設定、評価制度を取り入れている企業の社員に、図2を見せた場合、どのような反応を示すでしょうか? 「公平感のある処遇」に対しての不満が、ほかの2つよりも圧倒的に多く出るのではないでしょうか。
なぜかというと「公平感」というのはとても主体的なもので、評価を受け取る側の主観だからです。評価する側がいくら公平性に気を使ったとしても、不満をなくすことは非常に難しい、コントロールできないものなのです。
そして不満が多い企業、つまり目標管理と評価制度がうまく運用できていない企業は、目標設定と評価が年に一度の「イベント」になっていることが多く見られます。
年一回のイベントでは、日々の仕事とのつながりは希薄ですから、自分の目標に責任感が出ません。責任感が欠如した状態だと、次の目標設定もなかなかできません。すると、評価者が「お前の目標はこれだ」と押し付けるようになります。このような関係では信頼関係も生まれませんから、信頼のない評価者からの評価を社員が受け入れることはありません。「正当に評価されていない」というような不満が出るのは当たり前です。
これは負のサイクルとなり、多くの企業では最終的に「目標管理すること、評価することが目的となる」という「手段の目的化」に陥ってしまうのです。
残念ながら、人の能力や活動のすべてを定量化することはできません。つまり「正確な測定」はできないということです。それを前提としたうえで、評価を公平だと感じてもらうためにはどのようなことが必要なのでしょうか。
それは、社員と評価者の信頼関係の構築と、各々の責任と役割を明らかにするということです。図3のような関係がわかりやすいでしょうか。

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人が他人を信頼するのは、評価されたりしたりするからではありません。もっと単純に「自分のことを見てくれている」と感じるからです。人間には、よく知っている人を信頼するという性質があります(単純接触効果と呼ばれます)。普段から「この人は自分を見てくれている」と自分が感じている人の指摘や助言は、よく知らない他人からの指摘や助言より、はるかに信頼できるものなのです。
目標管理、評価制度を作るにあたっては、この信頼関係を構築するための仕掛けがとても重要になってきます。