NECとカゴメは、2020年4月から共同で事業展開をしているNECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」を強化した。
「CropScope」を活用した農園とシステム利用画面
「CropScope」は、センサーや衛星写真を活用したトマトの生育状況や農地環境(土壌の状態)を可視化するサービスと、人工知能(AI)を活用した営農アドバイスを行うサービスで構成されている。今回の強化ポイントは、AI営農アドバイスサービスの汎用性と、アプリケーションの利便性向上の2点になる。
AI営農アドバイスサービスでは、北半球から南半球まで、環境が異なる状況下においても熟練栽培者と同等の収穫量が可能となった。両社は2020年に、オーストラリアのカゴメ子会社と共同で「CropScope」の実証試験を行っており、これまで「CropScope」を適用してきたポルトガルとは土壌や品種、かんがい設備など栽培条件が異なるため、地下かんがいでの土壌水分シミュレーションやオーストラリアでの熟練栽培者のデータを学習し、分析手法などの強化を行っている。
アプリケーションの利便性では、「CropScope」を活用する世界各国の大規模生産現場ユーザーの声をもとに、土壌水分変化などの農地の異常を通知する機能、営農判断の優先順位を農地ごとにリスト化しデータをシンプルに表現する機能、蓄積データを活用し営農改善や振り返りに活用できる農地間の比較分析機能などを搭載した。
「CropScope」によるビジネスモデル
「CropScope」のビジネスモデルでは、カゴメは主にトマトの一次加工品メーカーに対して「可視化サービス」と「営農アドバイスサービス」を販売する。トマト一次加工品メーカーは、両サービスを用いてトマト生産者の営農を支援する。
「CropScope」では、熟練栽培者のノウハウを習得したAIが、水や肥料の最適な量と投入時期を指示するため、加工トマト生産者は栽培技術の巧拙に関わらず、収穫量の安定化と栽培コストの低減が期待できるとともに、地球環境に優しい農業を実践できる。
また、熟練者の営農ノウハウの形式知化により、技術継承や優秀な熟練栽培者の営農の再現が可能となり、産地の拡大や新規就農者の営農支援を行えるさらに、トマト一次加工品メーカーの管理者や生産法人のオーナーは、自社の農地や契約農家の農地におけるトマトの生育状況を網羅的に把握することができるため、客観的なデータに基づいた全体最適な収穫調整が可能となり、生産性の向上が図られる。