オープンシステムにも「古い」「新しい」がある
写真フィルムの規格で一般的なものは「35ミリ」である。さまざまなメーカーのフィルムカメラに使用でき、公開(オープン)されている仕様に準拠した製品であるが、デジタルカメラやスマートフォンの普及により、その規格を知る人も使う人も少なくなってきている。
「COBOL」というコンピュータープログラム用の言語を耳にされたことがある方も多いと思うが、これも公開(オープン)されている仕様に準拠し、さまざまなメーカーのコンピューターが利用してきた。現在は言語の選択肢も増え、年々開発者は減少傾向にあり、年齢層も高いためクローズのように見えてしまっているが、「Linux」や「Windows」でも利用できる。1990年から2010年代前半までの、一般的にオープンシステムとされているものにも当てはまる。“オープン=新しい技術のシステム”とは限らず、オープンシステムにもレガシーなものが多いということを利用者側が認識しておく必要がある。
提供ベンダー側もレガシーなオープンシステムを提供している意識の無い場合も少なくない。システム提案を受ける側は複数の企業の提案を受けることと、見る目を養うことを推奨する。
また、レガシーとされる時代から存在しているシステムや言語が、最新のオープンシステム技術に対応して現在に生き残っていることも知っていてほしい。寿命の短い技術基盤を選ばないようにすることも重要である。
DX時代のオープンシステム
今までの話を整理すると、オープンシステムは、必要な独自性を残しつつ、公開された仕様で、ネットワーク上でユーザーが自由に選んだ仕組みがつながり、そのユーザーの情報システムを形成することとなる。これはコンピューター同士がつながり始めた時代から目指され、様々なコンピューター上の機能において、その範囲が広がってきたものである。
また、公開された仕様は一つの分野において一つではなく複数存在し、競争、淘汰されてきた歴史がある。異機種のコンピューター同士がデータを送り合う仕組みから始まり、ソフトウェア同士の会話など、その範囲や単位は時代の経過とともに、どんどん機能的に詳細化している。細かい機能の接続点がネットワーク上に散らばっており、必要な機能をユーザーがつなぎ合わせて使うのが一般的となってきている。
簡単な例では、企業のウェブサイトにおけるオフィス所在地の案内で、「Google Maps」の機能が組み込まれていることを思い出してほしい。また、日々利用しているスマートフォンのアプリケーションも、その提供会社が独自に作った機能だけでなく、ネットワークを介して他の企業が作った機能の接続点と連携して作られている。例えば、「楽天市場」アプリで、購買商品の配送状況確認などの配送会社のサービスを利用できたり、「楽天ペイ」アプリで「Suica」のチャージや過去の乗車、購買履歴が確認できたりするなど、キャッシュレス機能の統合が図られている。各企業内部のシステムもこのような仕組みで作っていくことが主流になりつつあり、新規ビジネスや、業務変更に迅速に対応できることとでDXの足かせにならないシステム作りが今の時代のオープンシステムで重要となっている。
DX時代のオープンシステムについては、少々説明が難しくなったため、次回は、このオープン化の手法をもう少し堀り下げて、「いろんなシステム刷新パターンを比べてみよう--何を選べばいいの?」と題し、今までの様々なIBM iのオープン化、近代化の手法とメリット、デメリットなどをわかりやすく解説する。DX時代のオープンシステムと比べることで理解していただけるよう進める予定である。
(第4回は7月上旬にて掲載予定)
- 阿野 幸裕(あの ゆきひろ)
- ジーアールソリューションズ
- モダナイゼーション事業部長
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大学卒業後、トーメン情報システムズで、IBMメインフレーム、ミッドレンジコンピューター、UNIXなどのシステム開発を経験後、1995年よりSybaseやSASなどの外資系ソフトベンダーにてプリセールスエンジニアとして従事。
2020年4月から、その経験を生かし、ジーアールソリューションズに入社。以来、同社が独占販売権を持つカナダFresche solution社の製品を中核としたモダナイゼーション事業に参画している。