本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、電子情報技術産業協会 会長の綱川智氏と、SAS Institute Japan ソリューション統括本部クラウドアナリティクス統括部 部長の小林泉氏の発言を紹介する。
「デジタルを旗頭にあらゆる産業との『共創』を推進し、市場創出に取り組みたい」
(電子情報技術産業協会 会長の綱川智氏)
電子情報技術産業協会 会長の綱川智氏
電子情報技術産業協会(JEITA)の新会長に6月2日付けで就任した綱川智氏(東芝 取締役会長 代表執行役社長 CEO)が先頃、オンラインで記者会見を開いた。冒頭の発言は、綱川氏がその会見で、JEITAの活動について意欲を示したものである。
JEITAは2000年に、日本電子機械工業会と日本電子工業振興協会が統合して発足。IT・エレクトロニクス分野の業界団体として、テレビなどの家電製品やサーバーなどの産業機器、電子部品などを扱ってきた。だが、これからのJEITAについて綱川氏は次のように述べた。
「JEITAは今や、従来の分野にとどまらず、他の製造業やサービス産業を含めてあらゆる産業をつなげるプラットフォームのような団体になりつつある。業界における標準化や課題解決といった重要な取り組みを推進することはもちろん、今後注力すべきは、広範な分野の企業の参画を得て異なる知見や技術を持った者同士が連携し、業界を超えた課題解決や新たな価値を共に創り出す『共創』を推進することだと認識している」
そうした中で、JEITAの活動の中核領域であり、あらゆる産業に影響を及ぼすトレンドとして注目されているのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」である。綱川氏はこのDXについて、次のように語った。
「日本企業がDXに取り組んでいる割合は全体のまだ約2割という状況が、私たちの調査で明らかになった。DXの本質はその名の通り、トランスフォーメーション、すなわち変革だ。今一度、DXの目的を経営視点で捉え直し、ニューノーマルも見据えて、経営トップが自ら関与してビジネス変革をリードしていく必要がある」
その上で、JEITAの今後の在り方について次のように述べた。
「JEITAもその例外ではない。デジタルを旗印にあらゆる産業との共創を推進し、市場創出に取り組んでいかなければならない。JEITAの存在理由は何かと問われれば、それは会員企業の属する産業群の社会的なプレゼンスや信頼、価値を高めるということだ。デジタルイノベーションたるDXにおいてJEITAの会員企業が中核的役割を果たし、存在価値を示していくためには、自らが有するデジタル技術の市場拡大を目指し、ステークホルダーと共に取り組みを加速させていくことが求められる。その環境を整えることこそJEITA自らの使命であり、コロナ禍においてもその動きを止めるわけにはいかない」
綱川氏が言うように、JEITAの役割も時代と共に変化する。前身の団体がかつて開催していた「ビジネスショウ」や「マイコンショウ」をつぶさに取材し、記者として勉強してきた筆者も隔世の感があるが、引き続きJEITAの今後の活動に注目していきたい。
JEITAの記者会見。左から、川上景一常務理事、綱川会長、長尾尚人専務理事