(2)SQL Server
Access同様、Microsoftが開発したデータベース管理システムですが、Accessが比較的小規模なデータベースを想定しているのに対し、SQL Serverは大規模なデータベースを想定しています。コマンドを入力しなくてもマウスで操作が可能なため、とてもわかりやすいという特徴があります。わかりやすいと言ってもデータベースの知識があるエンジニアにとってという意味で、一般の人が簡単に扱えるというものではありません。
(3)Oracle Database
Oracleが開発したデータベースで、こちらも大規模なデータベースを想定しています。SQL Serverと同等の機能ですが、Windows系サーバーだけではなく、UNIX系のサーバー上でも動作します。Oracle Databaseは高機能ですが、操作方法を理解するのが非常に困難と言われています。SQL Server以上に難しいため、ITエンジニア以外は手に負えないソフトと言えます。
(4)Claris FileMaker
FileMakerは、一般的なプログラミング言語を一度も使用したことがない人でも、少ない手間でデータベースシステムを構築できるローコード開発プラットフォームです。前述のSQL ServerやOracle Databaseが純粋なデータベースソフトであるのに対し、FileMakerはデータベースソフトの機能からアプリケーションの開発、サーバー上での運用までを提供する統合型プラットフォームと言えます。小規模事業者から大規模事業者まで幅広く利用することが可能です。
3.表計算ソフトとデータベースソフトの違い
データを保存して検索することは、表計算ソフト(Excel、Googleスプレッドシートなど)でもできますが、データベースソフト(Access、FileMakerなど)とどこが違うのでしょうか。
表計算ソフトは、前述のとおり、大量のデータ処理が苦手です。表計算ソフトは、大量のデータを扱うことを前提に作られていないため、データ量が多くなると、処理速度が極端に落ちます。また、表示形式も「表形式」しか表示できないので、必要な情報を整理して自由な形式で表示するということができません。
それに対し、データベースソフトは、初めから大量のデータを保存することを前提に作られているので、データ量が多くなったからと言って、極端に速度が落ちることはありません。
また、表示形式は、「表形式」(図2)はもちろん、必要な情報を「フォーム形式」や「リスト形式」などのさまざまなスタイルで表示することが可能です。
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表計算ソフトの場合、データが多いと横長になり、スクロールしないと全体が見えません。また、件数が多い場合には下にスクロールするのに時間が掛かるという問題があります。
一方、データベースソフトの場合、図3のように1件の情報のみを表示可能です。もちろん表計算ソフトのように一覧表示もでき、表計算ソフトとデータベースソフトの大きな違いと言えます。
図3:データベースソフトの表示例
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表計算ソフトは誰でも簡単にファイルが作成できるため、日々いくつものファイルが作成されます。簡単に作れるというのは良い点ですが、無秩序に作られるため、どのデータが正しいのかわからなくなるというデメリットがあります。1つの会社に何百あるいは何千という数のExcelファイルがあるということもめずらしくありません。
機能面については、表計算ソフトでも他のシートを参照することはできますが、大量のシートを参照することは、安定性が悪くなるため事実上不可能です。それに対して、何枚もの表形式のデータを複雑に連携できるデータベースが「リレーショナルデータベース(RDB)」です。
たとえばリレーショナルデータベースでは、あらかじめ「取引先名簿」と「商品リスト」を登録しておけば、後日の「取引データ」の入力で請求書を発行することができます(図4)。
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同じ情報を表計算ソフトで管理しようとした場合、図5のようになります。
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表計算ソフトでは、同じデータを重複して何度も入力しなければならず、データ量が多くなり、間違いも起きやすくなります。「VLOOKUP」などの関数を使えば、入力の負担を減らすことはできますが、データの量が多くなることに変わりはありません。
間違いという点でもう少し説明すると、表計算ソフトの場合、入力規則などを使って制限しない限り、文字や数字は自由に入力することができます。そのため、たとえば、同じ「A」という文字を入力する場合でも、全角で「A」と入力する人と半角で「A」を入力する人が混在することがよくあります。基本的にコンピューターは「全角」と「半角」を区別するので、データを揃えるためには修正が必要になります。
それに対し、データベースソフトの場合、設計の段階でどのようなデータを入力可とするかについて十分検討して作成するので、誤った入力はかなり制御することができます。また、表計算ソフトのようにいくつもファイルが作られるということが基本的にないので、一元管理できることも優れた点と言えます。
表計算ソフトも優れたソフトですが、データベースソフトも便利なソフトなので、データベースソフトを使ったことがないという人は、これを機会にぜひ使ってみてはいかがでしょうか。
(第4回は6月下旬にて掲載予定)
- 伊達 諒(だて りょう)
- 日本銀行で金融機関の経営分析、厚生労働省で政策の調査業務、内閣府でSEを経て、フリーライターとなる。MBA、CFP、一級FP技能士の資格も有しており、金融、経済、IT、経営、会計、税、行政と幅広い分野での執筆活動をしている。これまで、大手メディアを中心に、500本以上の記事を執筆している。