工具卸売商社のトラスコ中山は6月15日、2026年のリリースを目指す流通プラットフォーム「トラスコプラットフォーム」計画を発表した。人工知能(AI)や最適化技術を組み込み、製造現場が必要とする副資材の物流を変革する。「物流プラットフォーマー」を目指し、「ベストなものが、もうそこにある」世界を実現させたいとする。
同社は、既に日本IBMやSAPジャパンなどの技術パートナーと、統合基幹業務システム(ERP)の刷新、「置き薬」の工具版「MROストッカー」などの技術を使った新しいビジネスモデルを実現している。「がんばれ!!日本のモノづくり」を企業メッセージとして掲げ、新しい基幹システム「パラダイス3」を2020年1月にスタートさせた。これを「トラスコ DX 1.0」とすると、今回の物流プラットフォームは「トラスコ DX 2.0」に当り、次のレベルの取り組みになる。
トラスコプラットフォームは、「ロジスティックスプラットフォーム」「商品データプラットフォーム」「UXプラットフォーム」「イージーコネクトプラットフォーム」およびプラットフォーム共通の基盤となるデータレイクで構成される。
トラスコ中山が2026年リリース予定の「トラスコプラットフォーム」
同日記者会見した代表取締役社長の中山哲也氏は、「人に聞くより自分で考えることを大切にしている」と述べ、「経営、物流、デジタルなど全ておいて自分たちで結論を見出してきた」とする。一方で、同社が掲げる「2025年までに在庫50万アイテム、2030年までに100万アイテム」「欠品なし、誤受注なし、誤出荷なし」「棚卸し作業がない」「問屋でありながら、ユーザー直送をストレスなくできる」「見積もりに瞬時に回答」「納品スピードを短縮」「環境負荷を最小に」といった能力目標を達成するには、最先端のデジタル技術が必要であり、「信頼して未来を託せるパートナーが必要になった」(中山氏)と説明した。
「ベストなものが、もうそこにある」をキーワードに構築するトラスコプラットフォームでは、コア業務のAIを専門とするシナモン、AI物流やロボットなどの技術を持つGROUNDとパートナーシップを組む。
ここでは、ベストな工具や資材の選定といったスピードを獲得するためにシナモンのAI技術、選定された商品を物流として全体最適で管理するGROUNDの「LogiTech」ソリューションなどを組み込む。AIを利用してユーザーの工場にある機械の稼働状況や作業進捗(しんちょく)などのデータ、天候などの外部データを活用することで需要予測を行うことにより、従来のような検索・見積もり・注文が不要になるという。「お客さまが必要な商品を先読みしてMROストッカーに届ける」と中山氏は説明する。
トラスコプラットフォームにより実現するビジネスフロー
さらに取締役 経営管理本部長 兼 デジタル戦略本部長の数見篤氏は、スマートファクトリーなどの動きが進むことで、「工場内がデジタル化されれば、その後にさまざまな外部サプライヤーとのデジタルネットワークが加速されると予測している」とコメント。また、納期ゼロに加えて物流の人手不足の緩和やカーボンニュートラルへの対応にもつながると期待する。
併せてトラスコ中山は、シナモンおよびGROUNDにそれぞれ5億円を出資することも発表した。
加えて、産学連携により名古屋大学とは、トラスコプラットフォームの研究や実証実験を行うことも明らかにした。その一部として、同社が愛知県北名古屋市に新設する物流センター「プラネット愛知」に、名古屋大学が参加する人間機械協奏技術コンソーシアムの活用や共同研究を進めることを発表した。
プラネット愛知は、敷地面積が1万2594坪(約4万1633平方メートル)、延床面積が 2万5189坪(約8万3269平方メートル)の同社最大の拠点になり、100万アイテムの在庫が可能になるという。稼働は2024年の予定で、設備投資は200億~250億円を見込むという。
名古屋大学 総長の松尾清一氏、シナモン 代表取締役社長 CEOの平野未来氏、トラスコ中山 代表取締役社長の中山哲也氏、GROUND 代表取締役社長 CEOの宮田啓友氏(左から)